ヴァインベルク/ピアノ独奏曲全集(4枚組)
(アリソン・ブリュースター・フランツェッティ:ピアノ 2012〜13録音)



Amazon : Weinberg: Complete Piano Music

化粧水と間違えてヘアトニックを顔面に塗りたくってしまった木曽のあばら屋です・・・・・・顔がスース−するよう〜。
まあ、すぅっとして気持ちが良いと言えないこともないなっ!(←負け惜しみ)

話は変わって、作曲家ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)は腕の立つピアニストでもありまして、
ショスタコーヴィチの交響曲第10番のピアノ連弾版を作曲者とともに録音していたりします。

 ショスタコーヴィチ「交響曲第10番」ピアノ連弾版・第2楽章
 

 

ショスタコーヴィチは「レニングラード・フィルもこれくらい上手に弾いてくれたら最高なんだけど」と語ったそうです(ムラヴィンスキー怒るぞ)。

ヴァインベルクは作曲家としてはCD4枚分のピアノ独奏曲を残しました。
これはアリソン・ブリュースター・フランツェッティというアメリカのピアニストによる全曲録音。
世界初録音の曲も多く、ヴァインベルク・ファンのはしくれとしては、いちどは聴いておかなくちゃであります。

ピアノ・ソナタ第1番 作品5(1940)は二十歳そこそこの若書き。
ナチスの侵攻を逃れてポーランドからソ連に亡命して間もないころ。
ショスタコーヴィチの影響はまだ感じられず、しいて言えばスクリアビン風でしょうか。
陰鬱で切迫した響きに、作曲者の孤独と不安を重ね合わせてしまいます。

 ピアノ・ソナタ第1番 第1楽章
 

ピアノ・ソナタ第2番(1942)は第1番よりは軽やかでプロコフィエフ風。
ただし神経症的な焦燥感も漂い聴く者を落ち着かない気持ちにさせるところなど、若くてもヴァインベルクの面目躍如。

 ピアノ・ソナタ第2番 第1楽章
 

独創的な異色作が「パルティータ 作品54」(1953)、10曲からなる組曲です。
1953年といえば、ヴァインベルクがKGBに逮捕され、あわや粛清かと思ったらスターリンが急死、あっさり釈放されるという事件があった年。
九死に一生を得たことが影を落としているのでしょうか、この曲、どこか壊れています。
可憐な「プレリュード」で始まりますが、どんどん不穏になってゆき、第6曲「マーチ」は軍隊の行軍のように威圧的。

 「パルティータ」より第1曲「プレリュード」
 

 「パルティータ」より第6曲「マーチ」
 

第9曲「エチュード」は低音域できりきり舞いするような、ショパンの葬送ソナタのフィナーレを思わせる変な曲です。

 「パルティータ」より第9曲「エチュード」
 

組曲としてのまとまりは感じられず、見事なまでにバラバラです、なんじゃこりゃ。

ヴァインベルクはぜんぶで6つのピアノ・ソナタを書きました。
最後のピアノ・ソナタ第6番 作品73(1960)は二つの楽章からなり、ベートーヴェンの最後のソナタを連想します。
ミステリアスで幻想的な響きの中に、暗い裂け目がぱっくりと口を開けるような第1楽章アダージョ。
同音反復を多用した、活発でありながら虚無的なフーガ風の第2楽章アレグロ・モルト。
これは「何かをあきらめてしまった人の音楽」だと思います。
「透明な陰鬱さ」とでもいうべきヴァインベルクの個性を存分に味わえますが、不用意に味わうとアブナイ気もします。

 第1楽章
 

 第2楽章
 

ピアノ・ソナタ第6番を完成させたあと、1996年に亡くなるまでの36年間、ヴァインベルクはなぜかピアノ独奏曲をほとんど書いていません(小品が数曲のみ)。
交響曲や弦楽四重奏曲や弦楽器のためのソナタは「もうええわ」と言いたくなるくらい量産してますから、奇妙といえば奇妙。
彼の内面を表現するのに、ピアノ1台では不充分だったのでしょうか?
ピアノ曲を書かなくなった1960年以降、弦楽器のための無伴奏ソナタをたくさん書くようになるのも興味深いところ。
ヴァインベルク自身は優れたピアニストでしたが、彼独特の恨み節というかユダヤの哀愁の歌には弦楽器やオーケストラのほうがふさわしかった、ということでしょうか。

 Can-Can(1965)
 (←珍しく屈託のない楽しい曲。奥さんにささげられています)

(2020.02.14.)


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