ミェチスワフ・ヴァインベルク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全集
(Linus Roth ヴァイオリン)



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ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜1996)の無伴奏ヴァイオリンソナタ・全3曲を1枚のCDにおさめた、
待望のアルバムが発売されましたっ!!

まあ待望してたのは日本中で私を含めて5人ほどだろうという自覚はあるんですが、とにかく待ちに待ってたもんで。

演奏は、2014年にヴァインベルクのヴァイオリンとピアノのための作品全集をリリースしてくれた Linus Roth

ヴァインベルク無伴奏ヴァイオリン・ソナタは、どれも円熟期〜後期の作品。
第1番が1964年、第2番が1967年、第3番が1979年です。
ショスタコーヴィチの影響からもいい感じに脱し、独自のスタイルを確立した作曲者により、
老獪で自在で融通無碍な音世界が繰り広げられる、ヴァインベルク・ファンにとってはたまらん曲なのです。

ワクワクしながらCDかけたら、いきなりピアノの音が流れてきてずっこけました。
曲目をよく見ると、冒頭と、各ソナタの間に、ショスタコーヴィチ「ヴァイオリンとピアノのための3つの幻想的ダンス」が1曲ずつ挿入されているのです。
どれも1分ちょっとの短い曲で気分転換になるし、ソナタとソナタの境目がわかりやすいですね。

さて気を取り直して、

無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番 作品82 
第1楽章は冒頭からリズミックで、ユーモラスでもあり、かなり親しみやすい曲。中間部は激しいアレグロとなり狂騒的に盛り上がります。
第2楽章は瞑想的なアンダンテ、中盤からの重音の連続がとても美しいですが、同じところをぐるぐる回っているような迷宮的な感覚が眩暈を誘います。
第3楽章はひょうきんですがどこか邪気をおびた、子鬼がうろちょろしているようなアレグレット。
第4楽章は鋭い音が聴く者を突き刺す厳しさをたたえたラルゴ。
第5楽章はヴァインベルク得意の(?)虫の羽音のようなプレスト。最後は激しく盛り上がり、ヴァインベルクにしては珍しく派手に終わります。

 第1楽章
 
 
無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 作品95
短い楽章7つで構成された曲。
ほぼ単音でシンプルな第1楽章、跳ねるような音型を虫の羽音がさえぎるような第2楽章、切り裂くようなオクターヴの重音が印象的な第3楽章。
たおやかな歌を、激しいピチカートが中断する第4楽章。ピチカートとアルコが目まぐるしく交代する、妖精のささやきのような第5楽章(美しい!)。
コラールのように神秘的で荘重な第6楽章。
そしてフィナーレ、重音とシンコペーションの嵐のような第7楽章はなんというか、ヴァイオリン1挺で「春の祭典」をやってるみたいな凄い曲です。

 第7楽章
 

無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番 作品126 は単一楽章で27分という、無伴奏ヴァイオリン曲としてはとんでもない大曲。
暗譜は大変だし、途中で譜めくりするには手が3本いるし、それこそピアノみたいに、譜めくり役の人を横に座らせとく必要があります。
まあ間違えても誰も気づかんけど(←コラコラ)。

それにしても冒頭から鋭くも激しい響きの連続、殺傷能力ありそうなキビシイ音楽です。
ナチスの犠牲となった作曲者の父親に捧げられています。

ちなみに第3番は、2014年に出たギドン・クレーメルヴァインベルク・アルバムにも収録されていました。
この曲を22分で演奏したクレーメルに対し、Rothは27分、
クレーメルが、乾き気味の音でメカニカルな面白さを前面に出した、起伏たっぷり切れ味抜群の演奏であるのに対し、
Rothは透明感のある軽めの音を駆使して、ゆったりと良く歌う音楽を作り上げています。
まあ、Rothとしてはクレーメルとおんなじような演奏したんじゃ意味がないですからね、その意気や良しです。
どちらも名演、お好みでどうぞです。

 

しかしヴァインベルクの音楽って、どれも私の中にすーっと入ってきます。
この暗くて分裂質で狂気をはらんだ奇妙な音楽が、なぜ温厚で円満な私にぴったりはまるのでしょうね(←自分で言うか)。
じつに不思議です・・・。

(2016.06.27.)

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