ヴァインベルク/無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲
(ギドン・クレーメル)
Tower : Weinberg/Sonatas for Violin Solo
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ギドン・クレーメルが、ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全3曲のCDを出しました。
ただし第3番は2014年にリリースした音源と同じもののようです
3番→2番→1番の順に収録されています。
3曲とも1960年代以降の円熟期〜後期の作品であり激シブです、難解です、歯応えたっぷりです、覚悟はいいですか。
第3番 作品126(1979)は20分を超える単一楽章のソナタ。
前衛的な力作であり集中して聴くのは大変。
この曲はナチスの犠牲になった両親に捧げられていて、父親の肖像、母親の肖像、少年時代の自分の肖像などを描いたいくつかの部分に分かれるそう。
(このCDの演奏ではありません)
お、重い・・・聴くだけでもしんどい曲だ。
ギンギンにとんがってます・・・。
まずは次の第2番 作品95(1967) から聴かれたほうがよいかも。
7つの短い楽章からなります。
第2番 第2楽章
(←「♪コガネムシは金持ちだ〜」を連想しちゃう)
・・・奇妙な音楽ではありますが、各楽章は短いので3曲の中では最も聴きやすいかも。
でもどの楽章もヘンです!
いったい何を考えているんだ〜!?
第1番 作品82(1964)は、5つの楽章からなる30分ほどの曲です。
これもなかなかつかみどころのない音楽で、聴いていると意識が飛びそうになります。
第1番 第2楽章 アンダンテ
(呪文のような曲・・・)
ヴァインベルクの無伴奏ヴァイオリン・ソナタの全曲盤は、これまでLinus Roth盤(2016)がありました。
クレーメルの演奏はRothよりも響きは重く、激しい表現が目立ちます。
言い換えればRothのほうはスマートですがちょっと線の細い感じです。
鬼気迫るクレーメルと客観的でクールなRoth、お好みでどうぞ。
なお演奏時間は全体としてクレーメルのほうが短くなっています。
ただ3曲とも渋くて地味で難解。
作曲者が自分の心の暗黒面を赤裸々に五線紙に書きつけたような、アブナイものを感じます。
ヴァインベルクをはじめて聴く人には決してオススメしません。
まずは交響曲をいくつか聴いてある程度のヴァインベルク耐性をつけたのちに手を出すべきでしょう。
それにしても、ギドン・クレーメルはヴァインベルクにどっぷりはまっていますね。
次はヴァイオリン・ソナタ全集でも完成させるのかな。
マルタ・アルゲリッチとの第5番、ユリアンア・アヴデーエヴァとの第6番の録音がすでにありますから、1番から4番を録音すれば全集になります。
ヴァイオリン・ソナタ第5番 第3楽章 アレグロ・モデラート (マルタ・アルゲリッチ&ギドン・クレーメル)
(比較的初期の作品で無伴奏ソナタよりかなり聴きやすいです)
(2022.03.22.)
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