ヴァインベルク/室内楽作品集
(ギドン・クレーメル:vn ユリアナ・アヴデーエワ:piano ギードレ・ディルヴァナウスカイテ:cello)
(2019)
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<曲目>
ヴァイオリンとピアノのための3つの小品
ピアノ三重奏曲 作品24
ヴァイオリン・ソナタ第6番
今年生誕100年のミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)。
「ショスタコーヴィチの亜流」扱いされ、ずっと軽視されてきた・・・というか、はっきりいって無視されていましたが、
世界を代表するクラシック・レーベルであるドイツ・グラモフォンから、2019年5月に「交響曲第2番/第21番」のCDがリリースされました。
これには全国推定130人のヴァインベルク・ファンも
「つ、ついにヴァインベルク・ルネッサンスが始まったのか、メジャー作曲家の仲間入りかっ!」
と色めき立ったのですが、
「まさかねー、だってヴァインベルクだもんねー」
と、正気に戻りかけていた初秋の頃、なんとまたもやドイツ・グラモフォンからヴァインベルクのCDが出たではありませんかっ!
ヴァインベルク/室内楽作品集
最近ヴァインベルクに入れ込んでいるヴァイオリニスト、ギドン・クレーメルが中心となったアルバムです。
まずは小手調べというかあいさつ代わりの「ヴァイオリンとピアノのための3つの小品」(1935)
ヴァインベルク16歳の、まだポーランドで幸福に暮らしていたころの作品ですが、
第1曲「ノクターン」は、ロマンティックでクラシカルな中にも不穏でいびつなものをかすかに感じさせ、タダモノではないにおいがプンプンします。
しかしこれが10代の少年の作品とは・・・。
「ヴァイオリンとピアノのための3つの小品」 第1曲「ノクターン」
(←4:00あたりからのクライマックスがナーバスでヴァインベルクらしい)
つぎの「ピアノ三重奏曲 作品24」(1945)も初期の作品ですが、これはどこに出しても恥ずかしくない名曲!
いや、マジでショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番(1944)に負けていないと思うんですが。
まあ作曲年代的に参考にした可能性はありますけど。
第1楽章「前奏曲とアリア」は、妙に晴れがましいファンファーレで始まります。
途中からヴァイオリンの静かな歌(アリア)になり、ピアノがひそやかにつぶやき、最後は弦のピチカートで終わるという、
尻すぼみ感の半端ない奇妙な楽章です、いったいどういう意図なのでしょう?
第2楽章「トッカータ」はやばいほどの切れ味で駆け抜ける無窮動。
クレーメルの過剰なまでの表現力がさらに火を注ぎ、うっかり触れると火傷するぜってレベルです。
「ポエム」と題された第3楽章は、ピアノの2分にも及ぶモノローグで始まります。
アヴデーエワのピアノの雄弁なこと、さすがショパン・コンクールの覇者です。
続くヴァイオリンとチェロによる陰気な対話は底知れぬ洞窟を下り闇の中に沈潜してゆくよう。
とにかく暗い楽章ですが、この陰鬱さ・不安感・虚無感がたまらないんですよ、これぞヴァインベルク!(←やや変態)
第4楽章「フィナーレ」は、ピアノの単音による雪が舞い落ちるようなフレーズで始まりますが、やがてヴァイオリンが虫の羽音のように入ってきます。
途中でフーガになったりして、目まぐるしく曲想が変わり聴くものを飽きさせません。
クライマックスでは激しく狂騒的に盛り上がりますが、最後は速度を落として息絶えるように曲を閉じます。
「消え入るようなエンディング」はヴァインベルクが生涯にわたって追求したスタイルであり、派手に「バーン!」と終わる曲はほとんどありません。
「ヴァイオリン・ソナタ第6番」(1982)はヴァインベルク最後のヴァイオリン・ソナタ。
14分ほどの短い曲ですが、内省的で深く研ぎ澄まされていて、凝縮された闇のような音楽。
ちょっぴり前衛的で難解ですが、これまた息絶えるように消え入るように終わります。
第3楽章「モデラート」(終曲)
と、いうわけでけっこう暗くて重く、若干聴く人を選ぶと思います。
しかし陰鬱で屈折したクラ〜イ音楽がお好きな方には超オススメの一枚です!(←いるのか?)
(2019.10.27.)
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