ヴァインベルク/交響曲第2番&第21番「カディッシュ」
(ミルガ・グラジニーテ=ティーラ:指揮&ソプラノ バーミンガム交響楽団
クレメラータ・バルティカ ギドン・クレーメル)



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なななんと、ドイツ・グラモフォンからミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜96)の交響曲がリリースされました!

天下のドイツ・グラモフォンですよ、世界で最も権威あるクラシック・レーベルですよ、カラヤンもバーンスタインもアルゲリッチもポリーニも所属していたドイツ・グラモフォンですよ。
そこからCDが出るとは、ついにヴァインベルクも作曲家として、ショスタコーヴィチやマーラーやベートーヴェンと肩を並べたわけですね!(←違う)
やっぱり「生誕100周年効果」なんでしょうかね。

振るのは新進女流指揮者として躍進著しいミルガ・グラジニーテ=ティーラ、バーミンガム交響楽団の音楽監督でもあります。

曲目は、交響曲第2番&第21番「カディッシュ」
初期と晩年の作品を組み合わせた意欲的な2枚組です。

交響曲第2番(1946)は、弦楽のための交響曲で、作曲者27歳の作品。
第1楽章は柔かく牧歌的に始まり、戦争が終わった平和な気分を表しているよう。
同じく抒情的な第二主題は独奏ヴァイオリン(ギドン・クレーメル)で歌われ、優美でロマンティックな楽想が続きます。
展開部では速度を上げ力強いクライマックスとなり、型通りの再現部を経て静かに楽章を閉じます。
一貫して流麗優美、文句なしの素敵な楽章、ヴァインベルクのただならぬ才能がよくわかります。



第2楽章はアダージョ、冒頭に幅広く歌われる主題がとても魅力的。
一貫して透明感に満ちた、静謐な楽章。



第3楽章アレグレットは、3つの楽章の中で一番ショスタコーヴィチぽいかもしれません。
と同時に、「フィナーレをなるべく盛り上げない」というヴァインベルク・スタイルの片鱗がすでに見られ、
中盤は結構盛り上がるのですが、徐々に力を落とし、最後は静かに息絶えるように曲を閉じます。



ショスタコーヴィチの先鋭とシューベルトの優美をあわせ持つかのような素敵な曲です。
初期ヴァインベルクの美点が凝縮した傑作で、クレメラータ・バルティカの水際立った演奏も曲の魅力をさらに引き立てています。


交響曲第21番「カディッシュ」(1991)は、続けて演奏される6つの楽章からなり、完成された交響曲としては最後のもの。
曲は「ワルシャワのゲットーの犠牲者」に捧げられ、それにはヴァインベルクの両親や妹も含まれます。
長大な第1楽章ラルゴは、管弦楽による悲哀に満ちた美しい序奏に続き、独奏ヴァイオリン(ギドン・クレーメル)が語り部のように嘆きの歌を紡いでゆきます。
終わり近くでショパン「バラード第1番」が引用されるのは、祖国ポーランドへのオマージュまたは望郷でしょうか。



第2楽章はアレグロ・モルト、管楽器が速射砲のごとく吹きまくり、うねる弦楽器、銃声のような打楽器、激しい混沌と狂騒。
老境に達した作曲者の精緻なオーケストレーションの技に圧倒されます。
1991年にこんな曲を書いていたんですから時代遅れと言われても仕方がないですが、良いものは良い!



第3楽章は、トロンボーンの陰鬱なファンファーレに続いて、長めのコントラバス・ソロが登場(交響曲では珍しい)。
これは「無伴奏コントラバス・ソナタ 作品108」からの引用。
つづいてクラリネットがクレズマー風の物悲しいメロディを歌います。



第4楽章はクラリネットのクレズマーがそのまま続き、「ユダヤの祭り」の景色。
しかしそれは弦楽器の厳しい和音で中断され、独奏ヴァイオリンによる寂しげな歌に続きます。



第5楽章はシロフォンのつぶやきと、ソロ・ヴァイオリンのピチカートなどで、ひそやかな緊張をたたえつつ静かに進行、後半大きく盛り上がり最終楽章になだれ込みます。



第6楽章、巨象の断末魔のようなホルンの雄叫び、渦を巻くような弦楽器の応答が何度か繰り返されたあと、
クラリネットの慰めるようなフレーズに続いてソプラノが登場、歌詞のないヴォカリーズで慰霊と浄化の調べを紡ぎます。
歌っているのはなんと指揮者のミルガ・グラジニーテ=ティーラ自身、経費節減のためでしょうか(←コラコラ)。
本職の声楽家にくらべるとつたない感じは否めませんが、美しく澄んだ素朴な歌声は、なかなか味わいがあります。
再びショパン「バラード第1番」が引用され、ハーモニウム(足踏みオルガン)がコラール風の響きを聴かせ、ソプラノが高音を響かせたあと、
死者の安息を祈るかのように静かに全曲を閉じます。



交響曲第21番「カディッシュ」、さすがはヴァインベルク最後の交響曲。
傑作ではありますが、長いし重いし暗いしで、とっつきにくいことはこの私が保証します(そんなん保証されても・・・)。
まあ、御用とお急ぎでない方はちょっとお聴きになっていただければ・・・。

(2019.05.18.)


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