ヴァインベルク/交響曲第1番&第7番
(スヴェトルンド指揮 エーテボリ交響楽団)



Amazon.co.jp : Weinberg: Symphony Nos.1/7

Tower@jp : Weinberg: Symphonies No.1 Op.10, No.7 Op.81


ミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜1996)の録音ラッシュが止まりません。

ナクソスからは無伴奏チェロのための作品が全集化されそうな勢いだし、cpoの弦楽四重奏曲全集は第4集まで出たし、
無伴奏ヴィオラ・ソナタ全集も出たし、傑作「交響曲第6番」フェドセーエフ指揮の新録音が出たし、
ヴァイオリン・ソナタも新しい全集録音が始まったよう。

 いやー、どうなっちゃってるんですか?

演奏家のみなさん、よほど弾く曲がないんですか?
それとも・・・、ついに人気作曲家に成り上がったんでしょうかヴァインベルク!?

ご本人も墓の下で言っていることでしょう。


  「生きてるうちに売れたかった!」   (シュニトケやペルトがうらやましや〜〜〜)


さて、ヴァインベルク・リバイバルの本家といっても良いシャンドス・レーベルからは交響曲全集が着々と進行中。
とはいえ、20曲以上ありますからねー、先は長いっす。

最新のリリースは、交響曲第1番と第7番のカップリング。

演奏はスヴェドルンド指揮、エーテボリ交響楽団
スヴェドルンドは、いまは亡きオリンピア・レーベルにヴァインベルクの室内交響曲を録音しています (その後altoから廉価で再発→コレコレ)。
2008年には、ヴァインベルク/協奏曲集もリリースしました。

ところで、交響曲第1番(1942)といえば、Northern Flowers レーベルから、
ティトフ指揮/サンクト・ペテルブルグ交響楽団による世界初録音が出たばかりじゃあーりませんか。
なんといきなり競合盤とは・・・。
ヴァインベルク・ファンとしては、うれしい半面、まだ録音のない曲に光を当ててほしかった気も。
このスヴェドルンド盤、ティトフよりも上品で洗練された演奏に聴こえます、なんだか軽やかです。
逆にいえば、ティトフ盤のほうが迫力あるともいえます。

 交響曲第1番・第1楽章 (若々しく爽やかな楽章。 ショスタコーヴィチの影響が見て取れます)
 


交響曲第7番(1964)は、弦楽とハープシコードのための、30分ほどの作品。
といってもハープシコード協奏曲的なものを期待すると見事に裏切られます。
ショスタコーヴィチの真似ではない、ヴァインベルク独自の個性が光る傑作だと思います。

第1楽章冒頭、とつとつとしたハープシコードのつぶやきに続いて、高音弦で歌われる哀愁のメロディ、透明な響き
無人の荒野を通り過ぎてゆく風のような、その荒野には乾いた屍が朽ちているような・・・・・これぞヴァインベルク節、ああたまらん。
 

第2楽章はスケルツォ風、空虚でほの暗く屈折していて大変よろしい。
 

間奏曲風の第3楽章も、虚空を彷徨うような不安定な弦の呟きに不安を掻き立てられます。
 

緩徐楽章でありながら激しくも短い第4楽章、濃密な悲劇性を帯びながらどこまでも美しいです。
 

第5楽章フィナーレは痙攣するようなチェンバロに始まる無窮動風、アレグロなのになかなか盛り上がらないところが、いかにもヴァインベルク。
ショスタコーヴィチのピアノ三重奏曲第2番や弦楽四重奏曲第8番に出てくる有名な「ユダヤの主題」がちょこっと引用されます。
最後はアダージョ・ソステヌートとなり、消え入るように終わります。
 

ほとんど室内楽であり、交響曲と呼ぶのがはばかられるほど。
曲全体にただよう、「ヘンな感じ」がなんとも言えず好き。
個人的にはこの曲、シュニトケ合奏協奏曲第1番(1976)に影響を与えていると思うんですが、どうでしょうか?

ヴァインベルク・ファンにとっては文句なしの名曲。
しかし基本的に「地味に暗い」ので、初めてのかたにはちょっと不向きかも・・・。

(10.1.6.)

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