ヴァインベルク/舞踏交響曲 & 交響曲第22番(オーケストレーション:キリル・ウマンスキ)
(ドミトリ・ヴァシリエフ指揮 シベリア交響楽団)



Amazon.co.jp : ミェチスワフ・ヴァインベルク:管弦楽作品集 第2集

Tower@jp : ヴァインベルク/舞踏交響曲・交響曲第22番


今年はミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜1996)没後20年。
「舞踏交響曲 作品113」(1973)と「交響曲第22番 作品154」(1993〜94)をカップリングしたCDが発売されました。

 どちらも世界初録音! やったー!
 全国80人くらいの(少なっ!)ヴァインベルク・ファンの喜ぶ声が聞こえるようです。

「舞踏交響曲 作品113」は、「6つのバレエの場面」という副題がついていて、1958年に作曲したバレエ「白菊」から6曲を選んで編曲したもの。
「白菊」は、原爆で失明した日本人少女「ハナコ」がソ連に招かれ手術を受けて視力を取り戻し、日本人の青年「タロウ」と結ばれるという、
どこから突っ込んだらよいのか困っちゃうな〜と言いたくなるバレエらしいですが、幸か不幸か(?)上演は中止となりました(政治的な理由とのこと)。

珍妙なストーリーとは裏腹に、ヴァインベルクの音楽は非常に充実しています。
バレエ音楽らしく、親しみやすく聴きやすく、機知に富みロマンティック。
プロコフィエフやショスタコーヴィチのバレエ音楽と較べても遜色ありません。
それほど東洋的な味付けはありませんが、管弦楽のための組曲として高い完成度です。

 第4曲 アダージョ〜モデラート (ドラマティックで緊張感あるアダージョに続くユーモラスで活発なモデラート)
 

 終曲 プレスト (無窮動的で狂騒的なフィナーレ、見事です)
 

「交響曲第22番 作品154」(1993〜94)は、その存在自体が驚きでした。
ヴァインベルクの番号つき交響曲は、「第21番”カディッシュ”」(1991)が最後だと思っていたので。

解説によると、ペレストロイカの時代に、ヴァインベルクはかつて自分を迫害し一度は逮捕までしやがったソビエト共産党とある種の和解に達し、
1990年にソビエト国家勲章を授与されました。
これで平穏な老後が・・・と思ったのもつかの間、1991年にソビエト連邦は崩壊、社会的保障のほとんどは失われます。
映画音楽などの仕事で稼ごうにも持病のクローン病が悪化、さらに自宅で転倒し腰骨を骨折し寝たきりに。
苦痛と貧困にあえぎながらも、生きることすなわち作曲することであった作曲馬鹿ヴァインベルクは、
ベッドの上で演奏される当てもなく新しい交響曲のピアノ・スケッチを書き上げましたが、オーケストレーションには手を付けることなく世を去りました。

これを、1962年生まれの作曲家キリル・ウマンスキがオーケストレーションしたのです。
作業にあたってウマンスキはヴァインベルクの作品を徹底的に研究、ヴァインベルクならこうしたであろう響きを忠実に作り上げました。
本当に見事な編曲で、ヴァインベルク以上にヴァインベルクらしいオーケストレーションと言っても華厳の滝じゃなかった過言ではありません。

おそらくヴァインベルク自身、これが最後の作品となることはわかっていたはず。
そのせいか、続けて演奏される3つの楽章からは、集大成的な「盛り沢山感」がひしひしと。
陰鬱な絶望に沈むかと思ったら力強く立ち上がって戦ったり、夢幻の境地に遊んだり、怒ったり、かすかに微笑んだりの40分。
最後はつぶやくようなピチカートで、孤独に幕を閉じます。

 第1楽章 ファンタジア 
 

いやー、いい曲だった!
他人のオーケストレーションとは思えません。
ヴァインベルク節、満喫しました。

{2016.05.17.)

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