ヴァインベルク/交響曲第8番「ポーランドの花」(世界初録音)
アントニ・ヴィト指揮 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団&合唱団
ラファウ・バルトミンスキー(テノール)
マグダレーナ・ドブロヴォルスカ(ソプラノ)
エヴァ・マルシエク(アルト)



Amazon.co.jp : Weinberg/Symphony No. 8 "Polish Flowers"

Tower@jp : Weinberg: Symphony No.8 "Polish Flowers"


どうやらナクソス・レーベルは、チスワフ・ヴァインベルクに本気になっているもようです。
このあいだ、交響曲第19番「輝ける五月」をリリースしたと思ったら、
こんどは交響曲第8番「ポーランドの花」を、世界初録音!

 世界初録音!

ヴァインベルク・ファンにとっては「クララが立った!」レベルの号泣イベントであります。
交響曲全曲録音(全21曲だったっけ?)が成し遂げられる日も遠くないのかもしれません。

交響曲第8番「ポーランドの花」(1964)は管弦楽に独唱・合唱が加わる、全10楽章・1時間近くの大規模声楽交響曲。
それを世界で初めて録音するのですから、さぞかし費用かかっただろうなあ・・・。

ポーランドの国民詩人(らしい)ユリアン・トゥビムの叙事詩「ポーランドの花」(1949)をテキストとし、
祖国の苦難の歴史、戦争の惨禍、未来へのかすかな希望を歌い上げた10の楽章からなる記念碑的な作品。
題材が題材だけにヴァインベルクも相当力を入れて作曲したもようであり、緊張感みなぎる堂々たる音の詩碑が屹立します。

第1楽章「春の突風」 女声合唱が透明な悲哀を美しく歌いはじめます。
ミステリアスで静謐、魅惑的なオープニングです。

 

第2楽章「バルティの子供達」 は無邪気に遊ぶ子供たちが戦争にまきこまれてゆく様子でしょうか(勝手な想像)

 

第4楽章「ここには果樹園があった」の悲哀と不条理。

 

徐々に緊張を高めクライマックスである第6楽章「レッスン」・第7楽章「ワルシャワの犬」で慟哭と憤怒が渦を巻きます。

 第6楽章「レッスン」 (ポーランドの子供達に彼らが将来直面するであろう不当な世界について警告する荒々しいワルツ)
 

 第7楽章「ワルシャワの犬」 (戦争の中で犬のように撃ち殺される人々!)
 

第8楽章「母」でふたたび静まって深い悲しみを歌い、最後の第10楽章「ヴィスワ川の流れ」で希望を垣間見せて静かに曲を閉じます。

 第8楽章「母」 (ナチスの犠牲となった息子を悼む母の姿)
 
 
 第10楽章「ヴィスワ川の流れ」
 

はじめちょろちょろ、なかぱっぱ、じゅうじゅうふいたら火を止めて・・・、みたいな構成と言えましょうか(←そうかあ?)。
ちょうど1時間くらいなので、ご飯を炊きながら聴くとぴったりかもしれません(←阿呆か)


ショスタコーヴィチ交響曲第14番「死者の歌」(1969)を連想します(合唱はついてないけど)。
しかし考えてみれば「死者の歌」は、この曲より後に作曲されています。
むしろショスタコーヴィチの方が参考にしたんだったりして。

長大で、暗くて、重くて、歌詞の内容も良く分かりませんが、それでもはっとするような美しい瞬間が随所に聴かれ、思わず引き込まれます。
荒々しい第6・7楽章は、いかにもヴァインベルクらしい狂騒・狂乱ぶり。
まだ5回くらいしか聴いていない私が言うのもナンですが、ヴァインベルクの代表作のひとつに数えるべき、大傑作交響曲ではないでしょうか。

(2013.3.30.)

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