ヴァインベルグ/ピアノ五重奏曲 弦楽四重奏曲第8番
(ヴァインベルグ:ピアノ ボロディン弦楽四重奏団)



Amazon.co.jp ; Vainberg: Quintet/Quartet No 8

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モイセイ・ヴァインベルグMoisei Vainberg(1919〜1996)のピアノ五重奏曲(1944)は、25歳の若書き。 
5つの楽章からなるなど、先輩ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲(1940)と似ているところもありますが、すでに独自の個性も充分。

ピアノの柔らかいメロディで幕開け。 これは全曲を統一するメイン・テーマで、あちこちに顔をだします。
ヴァインベルグにしては落ち着いた第一楽章です。

と思ってたら、ちょっと焦燥感の感じられる第二楽章アレグレットをへて、第三楽章プレストから、だんだんキレはじめます。
虫の羽音のような弦のうごめき、高音部でさえずるピアノ、ヴァイオリンが狂ったように歌い上げるワルツ主題。
古典的でありながらシュール、酔っ払ったショスタコーヴィチというか、躁状態で怒り狂うマーラーというか。
こういうタガの外れたアブナイ曲を書かせたら右に出るものがないのがヴァインベルグ
褒めてるのかと言われたら微妙ですが。

  ヴァインベルク:ピアノ五重奏曲 第3楽章
 

第四楽章ラルゴは、メイン・テーマの反行型による重々しいパッサカリア。
暗く沈潜してゆきます。 エネルギーを内に秘めた厳しい音楽。

そして第五楽章フィナーレで全開、狂騒的なアレグロ・アジタート、ヤケクソ感あふれるパワフルな楽章です。
激しく連打される和音、アイリシュ・ミュージックのジグのような舞踏主題によるフーガ風の展開からクライマックスに至り、
第1楽章のメイン・テーマを力強く再現、最後は力を弱めて主題を静かに回想しながら終わります。

  ヴァインベルク:ピアノ五重奏曲 第5楽章
 

若いに似ず、非常に完成度の高い作品ですが、
作曲当時の社会状況(第二次大戦中)や、作曲者の立場(ポーランドからの亡命ユダヤ人)、
彼の一族の悲劇(家族全員ナチスにより殺害)などを考えると、作曲者の悲しみと怒りが鋭角で突き刺さってくるのを感じずにはいられません。
作曲者自身がピアノを担当しているこの演奏は、いわば本家本元、鬼気迫る名演。

ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲に似ていることは認めますが、勝るとも劣らない大傑作・超名曲でありますっ!!


弦楽四重奏曲第8番(1959)は、15分ほどの単一楽章作品。 内省的で渋いです。はっきり言えば地味。
ヴァインベルグらしい哀愁のメロディが連綿と紡がれます。
後半、活発なアレグロ部分となりますが長くは続かず、最後は柔らかく優しいアンダンテが、夕闇に溶けるように消えてゆきます。
じっくり聴いていると、思わず自分の人生を見つめ直してしまいそうになります。あぶない。

  ヴァインベルク:弦楽四重奏曲第8番
 


(06.6.5.)


「ピアノ五重奏曲」はこのCDにも収録されています
(こちらのほうが入手が容易?)


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