ヴァインベルク/木管楽器のための室内楽集
(エリザヴェッタ・ブルミナ(ピアノ&アート・コンセプト))



Amazon.co.jp : ミェチスワフ・ヴァインベルク:木管楽器のための室内楽集

Tower@jp : Weinberg: Chamber Music for Woodwinds

<曲目>
クラリネット・ソナタ Op.28 (1945)
フルートとピアノのための12 の小品 Op.29(1946)
無伴奏ファゴット・ソナタ Op.133 (1981)
フルート、ヴィオラ、ハープのための三重奏曲Op.127(1979)


とつぜん寒くなりまして、「あれ、もう冬?!」という感じであります。
こないだまでポカポカと暖かく、日によっては汗ばむほどの気候だったような気がするんですが。

 「今年は秋、あったっけ・・・?」

とぼやきながら、あわててセーターを引っ張り出して着込んでます。

さて、ミェチスワフ(モイセイ)・ヴァインベルク(1919〜1996)のCD、コンスタントに新作が発売され、
全国推定75名ほどのヴァインベルク・ファンは、グフグフ喜ぶ今日この頃。

 管弦楽曲中心のシャンドス・レーベルに対し、 弦楽四重奏曲全集など室内楽を中心にリリースしてくれているのがcpoレーベル

今回、木管楽器のための室内楽集が発売されました。
初期と円熟期の作品が2曲ずつ収められています。

クラリネット・ソナタ Op.28 (1945)
ショスタコーヴィチがクラリネット・ソナタを書いていたら、こんなだったかも・・・
という「ショスタコまねっこ」な雰囲気で始まりますが、だんだんヴァインベルクらしい、陰影の濃い、クネクネウジウジした音楽になってゆきます。
アレグロ→アレグレット→アダージョと、楽章ごとにテンポが遅くなっていくところもヴァインベルクらしい。
そして随所できらめく美しいフレーズ、スリリングな掛け合い、この人やはりタダモノではない。
20世紀に書かれたクラリネット・ソナタとして屈指の名曲ではないかと思います。

 第1楽章
 

フルートとピアノのための12 の小品 Op.29(1946)
この曲にはちょっとびっくり。
ショスタコーヴィチを洗練して甘く味付けしたような艶やかさ。
ヴァインベルクとは思えないオシャレな音楽です。
土曜日の昼下がり、パスタとカプチーノが美味しいカフェで、控えめな音量で流しても違和感・・・ちょっとはあるかも知れないけど、
松田優作に「なんじゃあこりゃあ!」と言われることはないでしょう。
ヴァインベルクにもこんな曲、あったんですね。

 (このCDの演奏ではありません)

無伴奏ファゴット・ソナタ Op.133 (1981)
以前にも書いたように、ヴァインベルクは無伴奏ソナタが大好き。
しかし、まさか無伴奏ファゴット・ソナタまで書いていたとは・・・・・・音楽史上唯一では?
ファゴットの音色は暖かみがあって、とぼけた雰囲気で、気分がほっこりしますが、それを存分に味わうことができます。
しかし・・・20分以上かかるんですよね、これ。
それなりに頑張って変化をつけてますけど、だんだん法事で偉い坊さんの講話を聞かされているような気分に。
眠くなるわ、しびれは切れてくるわ(正座してませんけど)、終わってホッとしたことは否定できません。
まあ、珍品ではあります。
秘曲ファン、ファゴット・ファンは一度聴いておかれて損はないかと。

 第1楽章
 

フルート、ヴィオラ、ハープのための三重奏曲Op.127(1979)
珍しい楽器編成ですが、ドビュッシーに同じ編成の名曲があります。
あと武満徹「そしてそれが風であることを知った」とか。
しかし、それらが濃厚なロマンの香りを淫靡なまでに発散しているのに対し、ヴァインベルクのこの曲は乾いて枯れています。
ショスタコーヴィチの影響はすでになく、無駄のない手法で簡潔に描かれる山水画のような境地。
急速楽章も、夢の中で幽霊が踊っているかのようなつかみどころのなさ。
不思議な作品ですが、荒涼とした美しさに魅了されます。

 

なおこのCD、私は大変面白く聴きましたが、とにかく強烈に地味ですので、
これからヴァインベルクを聴いてみようかという物好きな方は、交響曲第6番あたりから始められることをオススメいたします。(・・・ならなぜ紹介する。)

(2012.12.2.)

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