ヴァインベルク/ピアノ五重奏曲 作品18
(オルガ・シェプス:ピアノ クス四重奏団 2019年)



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ミェチスワフ・ヴァインベルクのピアノ五重奏曲 作品18(1944)は、40分を超える大作で作曲者初期の傑作。

ヴァインベルク本人とボロディン四重奏団による名録音(1961)が決定盤ですが、いまは廃盤&入手困難。
しかしさすがは名曲、気鋭の演奏家による新録音が続々登場し、隠れた人気曲となっております。

2020年1月時点でもっとも新しい録音は、美人ピアニストとして人気のオルガ・シェプス と クス四重奏団による1枚。
ヴァインベルクのピアノ五重奏曲1曲のみで勝負という思い切りのよいCDです。

ちなみにオルガ・シェプスはこんな人(美人だ〜)。


作曲者自身の録音持ってるのに、ついふらふらと買ってしまいました・・・(男は悲しい生き物)。

曲は5つの楽章からなり、冒頭に登場する主題が全曲を統一するメイン・テーマとなります。
第一楽章はプレリュード的位置づけの、穏やかなソナタ形式楽章。


第2楽章はやや不穏となり、メインテーマが頻繁に登場、展開されます。


第3楽章は狂騒的なプレスト、虫の羽音のような落ち着かない音型、
唐突に登場するワルツのようなメロディ、キャバレーでバカ騒ぎしているような虚しさと狂気が交錯します。


第四楽章は14分を超える長大なラルゴ。
メイン・テーマの反行型による変奏曲ということですが、何度か聴いても正直よくわかりません。
この楽章をきちんと理解することは、これからの私の人生における「宿題」とさせていただきます(←大げさ)。


第五楽章アレグロ・アジタートは理屈も何もないノリノリのフィナーレ。
このビートはクラシックというよりはロックですなぁと思っていると、突然ヴァイオリンのアイリッシュ・ダンスが始まり踊れや踊れ、もうわけがわかりません。
クライマックスでメイン・テーマが堂々と再現し、最後は消え入るように曲を閉じます。


1944年の作品であり、当時の社会状況(第二次大戦中)、作曲者の立場(ポーランドからの亡命ユダヤ人)、一族の悲劇(家族全員ナチスにより殺害)などを考えると、
第四楽章の深い哀しみや第三・五楽章のアブナイ切れっぷりもわかるような気がします。

オルガ・シェプスクス四重奏団の演奏は、きっちりまとめあげられた完成度の高いもの。
ピアノの音の粒立ちもよくアンサンブルも完璧。
当たり前ですが、作曲者の悲劇に感情移入するというよりは、「肉体に心地よい」演奏であり、速い楽章では強烈な響きの快楽を、遅い楽章ではロマンティックな柔かさを味わえます。
それは決して悪いことではなくて、この曲が古典になりつつあるということ。
それでも曲のここかしこに、感性に突っかかってくる棘のようなものを感じます、なにかが引っかかります。
この「なにか」がヴァインベルクの「核」であるならば、おそらくヴァインベルクの音楽は時代を超えてゆくのでしょう。

(2020.01.06.)

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