ソヴィエトのトランペット協奏曲(Chandos 9668)
ビビ・ブラック独奏、オーベリアン指揮 モスクワ室内管弦楽団


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<内容>
アルテュニアン/トランペット協奏曲
アルテュニアン/トランペットと管弦楽のための変奏曲
パクムトーヴァ/トランペット協奏曲
ヴァインベルグ/トランペット協奏曲



以前、何かの本に、<アルテュニアンという人の「トランペット協奏曲」は、いい曲です>
と書いてあって、ずっと心にひっかかっていたのです。ようやく聴くことができました。

そのアルテュニアン(1920〜)のトランペット協奏曲(1950)は、単一楽章15分ほどの作品で、
序奏に続いて独奏トランペットに出る主題が、威勢が良くてかっこいいです。
曲はこの主題を中心に展開してゆき、途中にゆっくりした部分をはさみ、最後に主題が再現して華やかに終わります。

 (このCDの演奏ではありません)

アルテュリアンは、ハチャトゥリアンと同じくアルメニアの人で、民族的なあっけらかんとした雰囲気がよく似ています。
ただ、次の「トランペットと管弦楽のための変奏曲」は、なんだかつかみどころのない曲でよくわかりませんでした。(私の聴き込みが悪いのでしょうが)

パクムトーヴァ(1929〜)のトランペット協奏曲(1955)は、ロマンティックな雰囲気の音楽です。
やはり十数分の単一楽章作品。曲が始まって3分くらいで出てくる第2主題は、まるでラフマニノフのような「ロシアの哀愁」を感じさせます。

 

最後のヴァインベルグ(1919〜1996)は、ポーランド生まれで、1930年代にソヴィエトに移ってきた人。
彼の「トランペット協奏曲(1967)」、本CDの中でいちばん気に入りました。
ショスタコーヴィチそっくりなんです。
第1楽章「エチュード」は軽妙洒脱な雰囲気とその裏に隠された皮肉が、もろショスタコです。
グロテスクなパッセージがふいに顔を出したりするところなんか、本当にもう・・・。

 

第2楽章「エピソード」は、マーラーの第5交響曲の「葬送行進曲」を連想させます。
重苦しいような、幻想的なような、不思議な音楽。

 

第3楽章「ファンファーレ」は、過去の名曲から様々なファンファーレを引用する、人をくった音楽。
メンデルスゾーンの「結婚行進曲」、ビゼーの「カルメン」などが顔を出し、
クライマックスらしいクライマックスは作らないまま謎めいた雰囲気で曲を閉じます。

 

奇妙で、ひねくれていて、でも魅力的な音楽ですが、「社会主義リアリズム」路線からは、にらまれたんじゃないでしょうか。
このヴァインベルグという人、一筋縄ではいかない人みたいです。
もっといろんな作品を聴きたくなってきました。(交響曲をたくさん書いているそうです)

さてこのCD、演奏と録音はとてもいいです。
独奏のビビ・ブラックは、たしか美貌のトランペット奏者として有名な人です。
ジャケットに顔を出したほうが売れるはずですが、そういう面では勝負しない主義なのでしょう。

(02.2.24.記)


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