メンデルスゾーン&ゲーゼ/弦楽八重奏曲
(ラルキブデッリ&スミソニアン・チェンバー・プレイヤーズ)



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長女が先日、16歳になりました。

 長女 「16歳になったら、できることがあるんだよー。 前からやりたいと思ってたんだー。」
 私 「ま、まさかっ、結婚かっ?」
 長女 「献血だよっ!」

献血は16歳からなんですね。
たしかに無駄に血の気が多いので、少し抜いてもらったほうがいいかもしれません。


さて、16歳といえば、フェリックス・メンデルスゾーン「八重奏曲 変ホ長調 作品20」を書いた年。
11歳から15歳の間に「弦楽のための交響曲」全13曲、14歳で「ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲」を書き、
弦楽四重奏曲もすでに1〜2曲完成させていたらしいとはいえ、この「八重奏曲」の完成度、タダゴトではありません。
ヴァイオリン4、ヴィオラ2、チェロ2 の8つの弦楽器を自在に操り、交響的でスケール大きな音楽空間を作り上げるワザは老練さすら感じます。
ただし、全曲を貫く屈託のない明るさは、やはり苦悩も挫折もまだ知らない青年ならではかも。

全曲の半分近くを占める長大な第1楽章は天上の調べ
冒頭、第1ヴァイオリンが歌う主題の晴れやかで美しいことといったら・・・。
ほかの楽器はすべて伴奏、第1ヴァイオリン、さぞ気持ちが良いことでしょう。

 第1楽章
 

そして展開部の終わり、全楽器のユニゾンによる16分音符の奔流から再現部になだれこむところは、鳥肌が立ちそうになります。
    ここから
      ↓ 
 (このCDの演奏ではありません)


ハ短調の第2楽章アンダンテは甘い哀愁漂うメランコリックな楽章。
はかなく、涼しげなたたずまいです。

第3楽章は2拍子のスケルツォ。
妖精的な雰囲気は「真夏の夜の夢」に通じるものがあります。
気ままに遊び戯れているようで、じつはきちんとソナタ形式になっているのが面白いところ。

そしてフィナーレは華やかでめまぐるしい無窮動風フーガ。
恐ろしいほど緻密かつ巧みに作られ、まばゆいばかりのエネルギーを放ちながら圧倒的な推進力でたたみかけます。
「フェリックス、あなたは神なのですか?」と問いかけたくなるほど。
クライマックスの二重フーガの頂点で突如第3楽章の主題が再登場、なんてお遊びもあります。

 第4楽章 プレスト (忙しい楽章! 笑いさんざめくような朗らかさが素敵)
 

一分の隙もなく構築された堂々たる音楽。 まさに天才の仕業です。

 愛聴しているのは、アンナー・ビルスマ率いるラルキブデッリスミソニアン・チェンバー・プレイヤーズによる録音。
 楽器はすべてスミソニアン博物館所蔵のストラディヴァリウスです。
 合計金額、いくらになるのでしょう・・・きっと天文学的。
 ガット弦を使用しており、やわらかくふくらみのある響きが楽しめます。
 半面、鋭さや切れ味は犠牲になっていて、響きがちょっともわーんとしている感がありますが、この独特な感触が好きなのです。
 

CDの後半に収められているのは、ニルス・ゲーゼ「弦楽八重奏曲 ヘ長調 作品17」
メンデルスゾーンの弟子である作曲家/指揮者で、師のヴァイオリン協奏曲シューマンのピアノ協奏曲の初演の指揮を担当しました。
メンデルスゾーンの没後はゲバントハウスの正指揮者を継ぎ、故郷デンマークに戻ってからは王立音楽院の設立に尽力、ニールセンなどを教えました。

「八重奏曲」は、1848年、つまりメンデルスゾーンの死の翌年の作品。
師匠の名曲と同じ編成・構成で作曲されたこれは、いわば偉大な師へのオマージュ
したがってこの曲に対して「メンデルスゾーンそっくり」というのは、最上の褒め言葉です。

 第1楽章
 

 それにしても16歳のメンデルスゾーンは凄い・・・。
 しかし、ウチの娘だって負けてはいません。
 なぜっていくらメンデルスゾーンでも、献血したことはないでしょうから!
 か、勝った・・・・(←何の勝負?)。

 ゲーゼ:弦楽八重奏曲 第1楽章
 (日本を代表する二つの四重奏団の華麗な共演。重厚な名演奏です)

(10.5.3.)

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