フェリックス&ファニー・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲集
(エベーヌ四重奏団)



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<曲目>
フェリックス・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第2番 イ短調
ファニー・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲 変ホ長調
フェリックス・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調



ファニーお姉さまの注目盤が久々にリリースされました!

 え、「ファニーお姉さま」って誰かって?

フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)の姉上、ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル様(1805〜1847)であります!
フランスの若手カルテット代表格エベーヌ四重奏団が、姉弟の弦楽四重奏曲を集めたアルバムを出したのです。

 ジャケット写真はさながら出入りに向かうチンピラ4人組、タランティーノ映画の1シーンみたい。
 向こうからこんな連中が歩いてきたら迷わず走って逃げるところですが、CDの内容は実に素晴らしい。

ファニー・メンデルスゾーンの弦楽四重奏曲(1834)のCDは、いままでにも出ていました。
しかしエベーヌ四重奏団、切れ味、迫力、表現力、どれをとってもピカイチです。
この作品の真の姿を初めて明らかにしてくれたと言っても過言ではないほど。

第1楽章は夢見るアダージョ・マ・ノン・トロッポ、つまり緩徐楽章で始まるという大胆さ。
ベートヴェンの作品131を意識しているのでしょうか?
 

第2楽章は軽妙なスケルツォ、なんと中間部は見事なフーガです!
そして第三部も第一部の単なる繰り返しではありません。
 

第3楽章は上品な憂いに彩られたロマンツェ。 しかし中間部では激情が溢れ出すようです。
 

第4楽章、アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェは華やかなフィナーレ、ソナタ形式は唯一この楽章のみ(それもかなり自由な)という思い切った構成。
明るく晴れやかな主題で始まりますが、展開部で短調に転じて激しく葛藤するところでは、ファニーの情念が激しく燃え上がります。
このエモーショナルな切迫感は、弟フェリックスにはないものです。
 

20分少々の短い曲ですが、緩急を自在に操る巧みな演奏により、大曲を聴いたかのような満足感を味わうことができます。
音楽形式の面でも弟よりよほど進歩的です。


そして、フェリックス最後の四重奏曲にして最高傑作(だと私は思う)「第6番ヘ短調作品80」
ファニー急死の衝撃の中で書かれ、「ファニーへのレクイエム」とも呼ばれるこの曲、以前にカルミナ四重奏団のCDをご紹介しました。
あれは青白い炎がめらめらと燃えるような激しい演奏ですが、エベーヌ四重奏団は見事な技巧と高度なアンサンブルによりストレートかつスタイリッシュに演奏しています。

鬼気迫る感ではカルミナ四重奏団に軍配を上げますが、純音楽として精度の高い演奏を聴かせるエベーヌ四重奏団、やはり素晴らしいです。

 フェリックス・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第6番・第1楽章
 

冒頭に収められたフェリックスの「弦楽四重奏曲第2番」は、18歳の作品で、若者らしい哀愁と感傷が魅力的な曲。
どこを切っても甘酸っぱい青春汁が滲み出るようで、滅茶苦茶キレイですが、薄汚れたオッサンにはちと気恥ずかしかったり。
これまた素敵な曲、みずみずしい演奏です。

 フェリックス・メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第2番・第1楽章
 

(2013.1.28.)


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