ファニー・メンデルスゾーン/ピアノ・ソナタ全集
(ガイア・ソコリ独奏 2020録音)
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「イースター・ソナタ」の初の正式録音!
ファニー・メンデルスゾーン(1805〜47)のピアノ・ソナタはいまのところ3曲が知られています。
ソナタ ト短調(1843)
「イースター・ソナタ」イ長調(1828)
ソナタ ハ短調(1824)
これは3曲をすべて収録した唯一のアルバムです。
ファニー・メンデルスゾーン/ピアノ・ソナタ全集
1998年イタリア生まれの若いピアニストガイア・ソコリが、新鮮な演奏を聴かせてくれます。
クラシックピアニストなのに左前腕にタトゥーが入っているのがいまどきですね。
ソナタ ト短調はすでに数種類の録音がありますが、ガイア・ソコリの演奏は切れ味の良い軽やかさが特徴。
重厚で力の入った演奏が多いなかで、スタッカートを多用した跳ねるような歌いまわしはひと味違って新鮮です。
第二主題は美しくも艶のある音色で抒情的な気分をかもしだし、展開部はテンション高く盛り上がります。
他の楽章も現代的でくっきりとした解釈、個性的かつ若々しい快演です。
第1楽章 アレグロ・モルト・アジタート
イースター・ソナタは、来歴がちょっとややこしい。
楽譜コレクターでレコードプロデューサーのアンリ・ジャック・クーデル氏は、
1970年にパリの古書店で
「Ostersonate, F・Mendelssohn (イースター・ソナタ、F・メンデルスゾーン)」と書かれた手書きの楽譜を発見します。
「フェリックス・メンデルスゾーンの未発表の作品」と思ったクーデル氏、知人のピアニスト、エリック・ハイドシェックに録音してもらいました(名演です)。
しかし楽譜は出版しなかったので、その後演奏するピアニストは現れませんでした。
その後楽譜は一時行方不明になったりもしたようですが、
2010年に、筆跡鑑定やファニーの日記などからファニー・メンデルスゾーンの作品であることが確定し、2014年に楽譜が出版されました。
姉弟でイニシャルが同じなの、まぎらわしいですね・・・。
このCDはハイドシェック以来の録音で、ファニー・メンデルスゾーンの作品とわかってから初めての録音となります。
1828年のイースター(4月)から6月にかけて作曲されました。
やさしく始まる可憐な第1楽章は自由なソナタ形式で書かれ、作曲者を伏せて聴かせられたら「シューベルト?」と答える人が多いのではないでしょうか。
第1楽章 アレグロ・アッサイ・モデラート
第2楽章 ラルゴ・エ・モルト・エスプレッシーヴォは中間部にフーガを持つ大胆な構成。
ファニーお姉さまの独創性が光ります。
バッハのチェンバロ曲の緩徐楽章のような雰囲気。
軽快なスケルツォの第3楽章を経て、フィナーレの第4楽章はイ短調で激しく始まります。
モーツァルトのピアノ協奏曲第20番やベートーヴェンの「月光ソナタ」の第3楽章を連想します。
荒れ狂う嵐のようなソナタ形式の主部が終わると、讃美歌「キリストよ汝、神の子羊」が引用され(下の動画の5:04)、祈るように静かに全曲を閉じます。
この讃美歌はバッハのカンタータ第23番にも使われているとか。
この頃メンデルスゾーン姉弟はバッハのマタイ受難曲蘇演を計画・準備中だったことも影響しているのかも。
第4楽章 アレグロ・コン・ストレピト
いやもうなんというか素晴らしい傑作です。
ファニーの才能、弟にまったく負けていないと思うんですが。
ソナタ ハ短調 は、ファニー18歳の作品。
初期のベートーヴェンをちょっとお洒落にしたような、短い3つの楽章からなる曲。
第3楽章 プレスト
3曲とも大変魅力的な曲だと思います。
イースター・ソナタ(エリック・ハイドシェック演奏)
(2023.06.25.)
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