ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルの音楽



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 メロディ 作品4−2
 

木曽「さて本日のゲストは、今年(2005年)生誕200年でいらっしゃいます、
 
ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼルさん(1805〜1847)に、お越しいただきました」

ファニー「まあひどい、レディの歳をあからさまに、それも200歳というのをばらすなんて。 ぷんすかぷん。」

木曽「で、でも、そうしないと、メモリアル・イヤーだとわかりませんから。それに、今でもとてもチャーミングですよ。」

ファニー「そうかしら、お上手ね、フフフ・・・」

木曽「ところでファニーさんは、弟のフェリックス・メンデルスゾーン氏に劣らない音楽的才能を持ちながら、
  なかなか作品を発表する事ができず、作曲家としてはある意味で不遇でしたね」

ファニー「パパは私が職業音楽家として活動することを、絶対に許してくれなかったのよねー。
  フェリックスには許したのに。 ぷんすかぷん。」

木曽「か、軽いノリやなぁ〜・・・ お父様はたしか大銀行のオーナー社長でいらっしゃいましたね。
  現代なら、財閥のお嬢様が、ロックバンドを組んでメジャー・デビューするようなものでしょうか。
  批評家はあなたについて
  『もし貧しい生まれで、自分で稼がねばならない境遇だったら、クララ・シューマンのような大ピアニストになっただろう』
  と語っています」

ファニー「そういえば、クララを羨ましく思ったこともあったわねえ・・・」

木曽「あなたはハイジですか」

ファニー「え、何の話?」

木曽「いえ、忘れてください(す、すべった・・・)

ファニー「1835年に父が亡くなり、ようやく作品を出版しようと思ったら、今度は弟のフェリックスが、
  『出版を勧めることはできません。ファニーは芸術家になるには、気力も使命感もなくあまりに女性的です』
  なんて言い出して・・・くぅーっ! くやっしい!!
  夫のヘンゼルは、あくまで出版をすすめてくれたけれど、あきらめました」

木曽「フェリックスは、自分より才能があるかもしれない姉と、同じ世界で競い合うことが怖かったのかも知れませんね。
  結局、それから10年以上を経た1846年、フェリックスの反対を押し切る形で、作品1の歌曲集を出版されました」

ファニー「とても好評だったのよ」

木曽「その後、矢継ぎ早に作品を発表されますが、わずか1年後の1847年5月14日、脳出血で倒れ、42年足らずの生涯を閉じられました」

ファニー「主婦として、音楽家として、とても忙しい人生だった・・・
  メンデルスゾーン家の屋敷では、私が子供のころから『日曜音楽会』を開いていたの。 
  フェリックスが音楽家としてあちこち飛び回るようになってからは、私がひとりでプロデュースして、指揮をして、ピアノも弾いたわ。
  常設の合唱団を持ち、オーケストラを雇って、聴衆も毎回百人以上がつめかけてくれたのよ。 
  で、結局、音楽会のリハーサル中に倒れたのよね、私」

木曽「ファニーさんの死に衝撃を受けたフェリックスは、見る見る体調を崩し、ノイローゼになり、半年後に後を追うように亡くなってしまいます。
  夫の宮廷画家ヘンゼルも、悲しみのあまりでしょうか、その後ほとんど絵が描けなくなってしまったとのことです」

ファニー「わっはっは、男ってヤワよねー」

木曽「わっはっはって・・・ それだけファニーさんの存在が大きかったのでしょう。
  フェリックスは、なんだかんだ言ってもファニーさんのことを誰よりも深く愛し信頼していた(奥さんのセシルよりも!?)ようですし。
  彼の功績のひとつである、わずか20歳でのバッハ/マタイ受難曲・復活上演も、ファニーさんの協力があってこそと言われています」

ファニー「ある年のクリスマス、私たちに『マタイ受難曲』の楽譜をプレゼントしてくれた人がいたの。
  2人とも、素晴らしい作品なのでぜひ演奏したいと思って、何度も連弾で弾きながら、解釈を深めていったわ。
  ツェルター先生には反対されたけれど、フェリックスは頑張って、とうとう1829年の『マタイ復活演奏』にこぎつけたのよ。
  大変だったけど、でも、とても楽しかった・・・」

木曽クリスマスプレゼントが『マタイの楽譜』つうところからして次元が隔絶しているというか、どう突っ込めばいいのかわからんです。
  それはそうと、ファニーさんの作品で、おすすめはなんでしょうか」

ファニー「作品11として出版された遺作の『ピアノ三重奏曲』は自信作よ。 CDも数種類出ているはず」

木曽「これ、いい曲ですね。第4楽章のクライマックスで第1楽章の第2主題が再現するなど、構成的にも大胆かつ緻密です」

ファニー「ピアノ曲では、イタリア旅行の印象をまとめた組曲「1年」(Das Jahr) (The Year)がお気に入りね」

 「一年」より「6月」
 

木曽「美しく洗練された曲ぞろいの組曲ですね。
  これを聴くと、フェリックス名義の『無言歌』の何割かはあなたの作品だという噂も、うなずけます」

ファニー「さあ、どうかしら・・・フフフ。『弦楽四重奏曲』 『ピアノ・ソナタ』 『管弦楽のための序曲』なども、良かったら聴いてみてね。
  あと4〜5年長生きできたら、交響曲やピアノ協奏曲も書いたんだけどなあ・・・」

木曽「本当に残念でしたね」

ファニー「私、美貌財産才能には恵まれたけれど、寿命にだけは恵まれなかったわね、ぷんすかぷん」

木曽「そ、そこまで言いますかぁ・・・!」

 管弦楽のための「序曲」
 

(05.4.9.記)


追記:ファニー・メンデルスゾーンさんのわが国初の本格的評伝
   「もうひとりのメンデルスゾーン」(山下剛 著)が刊行されました。(06.9.16.)


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