ファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル/歌曲集&ピアノ曲集


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これは驚きです!

なんと、ナクソスから、「もうひとりのメンデルスゾーン」ことファニー・メンデルスゾーン=ヘンゼル(1805〜1847)の
歌曲集とピアノ曲集が立て続けにリリースされましたっ!!

おお、ついにファニー・メンデルスゾーンがメジャーになるときが来たのでしょうか!
大作曲家としてのし上がる日も近いのかっ!

よっしゃー、ファニー、天下とったれー!(←なんじゃそりゃ)


ファニーは生涯に約250曲の歌曲を残したと言われます(ちなみにフェリックスは約80曲)。
その魅力はなんといってもメロディの美しさ。
ピアノを得意としただけあって、ピアノ・パートも充実しています。

「六つの歌曲集 作品1」(1846)は、弟フェリックスの反対を押し切って、はじめて自分だけの名前で出版した作品集。
それまでに作曲した膨大な歌曲の中からよりすぐった自信作が集められています。

 「朝のセレナード」作品1−5
 (軽やかなメロディがキャッチーです)

 「ゴンドラの歌」作品1−6
 (優美極まりない舟歌)

突然の死の半年後に出版された「歌曲集 作品7」(1847)は、
1840年以降に作曲された作品が多く、円熟の境地を聴くことができます。

 「夜のさすらい人」作品7−1
 (繊細で独創的な転調の連続)

 「エルウィン」作品7−2
 (とにかくメロディが美しい)

「五つの歌曲 作品10」は、ファニーの死後、弟フェリックスによって編まれたもの。
死の前日に作曲された最後の作品「山のよろこび Bergeslust」も収録されています。
その歌詞の最後の二行は、ファニーの墓碑に刻まれているといいます。

  
「思いと歌は   天上へと届く」
  Gedanken gehn und Lieder  bis in dos Himmelreich


 (この楽しげな歌曲が絶筆だなんて・・・)

ファニーのメロディ・センスの良さ、弟以上じゃないかと思うほどです。

ピアノ曲集もまた美しい作品ぞろい。
激しく疾走する1曲目「アレグロ・モルト ハ短調」から最後まで捨て曲なしです(捨て曲って・・・)。

 (渦巻く情念の嵐に巻き込まれます!)

ファニーのピアノの腕前は、クララ・シューマンも感嘆したほどであり、恐らく当時の最高水準のテクニックを持っていたと思われます。
したがってどの曲もきわめて技巧的ですが、同時にめまいがするほど優雅で上品。

 ノットゥルノ ト短調 
 (繊細優美の極み・・・)

アルバムの白眉は、「ピアノ・ソナタ ト短調」(1843)
ファニーのピアノ曲の代表作とされています。 
4つの楽章は続けて演奏され、奔放にして激しいファンタジーが自由に飛翔します。
幻想的で叙情的、ドラマティックでピアニスティックな傑作です。
一部の隙もなく構築され、ぎっしり詰めこまれたソナタ形式の第1楽章(わずか4分たらず!)、その攻撃的なほどのテンションの高さは、弟より男性的なほど。
中期のベートーヴェンを思わせるものがあります。

 ピアノ・ソナタ ト短調より第1楽章
 (内に込めたエネルギーと推進力!)

第4楽章は花びらが舞い踊るような色彩的なロンド。

 第4楽章
 


アルバム最後を飾るのは「おしまい」と名付けられた2分あまりの小品。
蝶のたわむれのようなアルペジオの舞。

 (ファニー18歳の頃の作品です)

(10.4.22.)


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