メンデルスゾーン/弦楽四重奏曲第2&6番
(カルミナ弦楽四重奏団)



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フェリックス・メンデルスゾーンは、大金持ちのお坊ちゃま。
何不自由なく育てられ、家族から惜しみない愛情を注がれました。
音楽的才能は天才的なうえに、画家としてもプロ並みの腕前。
おまけに頭脳優秀・教養豊富で、客人として訪れたゲーテ、ヘーゲルらとも知的な会話を。
さらに甘いマスクに優雅な身のこなし・・・、完全に王子様キャラですな。
「作曲王子」っていうんですかね(←言わない)

あまりの王子ぶりに腹が立ってくるほどです。
現実にいるんですね、こういう人。

ただし、あまりにも恵まれていたためでしょうか、その音楽は「端正で甘い叙情をたたえてはいるものの、深みに欠ける」
・・・なんて言われることが多いですよね。 やーい、ザマミロ!(←子供か)


しかししかし、メンデルスゾーンにもあるのです。
果てしない絶望と慟哭叫びとすすり泣きに満ちた深淵のぞきこみ系の大傑作が。


それは弦楽四重奏曲第6番へ短調 作品80


1847年5月、4歳上の姉ファニーが急死!!
旅先で知らせを聞いたフェリックスは、立ち上がれないほどの衝撃を受けます。
フェリックスに勝るとも劣らない音楽的才能を持つファニーは、彼にとって最高の理解者であると同時に良きライバル
もうひとりの自分というか「精神的ふたご」のような存在でした。
彼は半身をもぎ取られたような気持ちになったことでしょう。

この曲は、ファニーの死を悼んで書かれたもので、「ファニーへのレクイエム」と題されています。
そしてフェリックスは、1847年9月に曲を完成してまもなく体調を崩し、11月には姉のあとを追うよう亡くなってしまいます。

第一楽章は身もだえするようなトレモロの第一主題と慰めを感じさせる第二主題による自由なソナタ形式。
両者は葛藤しますが、最後には悲しみがすべてを押し流してしまいます。
 (このCDの演奏ではありません)
 
第二楽章は暗く激しいスケルツォ。
心の奥で冷たい炎が燃えているような鬼気迫るものを感じます、なんか怖いっす。
突然逝ってしまった最愛の姉への怒りを含んだ慟哭でしょうか。
 (このCDの演奏ではありません)

第三楽章は変イ長調のアダージョ。
寂しさをこらえながら死者の冥福を祈るような、気高い哀しみにあふれています。
後半耐え切れず、第一ヴァイオリンが思わず悲痛な叫びを上げてしまいます。
 

そしてフィナーレ、苦悩と絶望、狂乱と哀しみが交錯、形式的にはほとんど破綻しています。
痙攣のようなトレモロ音型、地の底から不気味にうなるチェロ、切り裂くようなヴァイオリンの叫び。
一瞬も弛緩することのない疾走する哀しみ。
それはついにラスト1分の何かを振り切ろうとするような三連符の奔流から激烈な終結へ!
 
 

いやー、集中して聴くと実に疲れます。
これほど赤裸々な慟哭の音楽は、音楽史上に類を見ないのではないでしょうか。
間違いなくロマン派の弦楽四重奏曲では最大の破壊力を持つ曲です。
まかり間違えば殺傷能力もあるんじゃないかと(←ないって)

メンデルスゾーン、やはり破格の天才でありましょう。
一度は聴いておきたい異形の傑作


同時収録の第2番イ短調は、作曲者18歳の作品。
甘い感傷的な旋律と、ベートーヴェン風の堅固な構成が見事に共存した堂々たる名曲です。
これはこれで、末恐ろしいほどの完成度であります。

 第4楽章より
 

(09.4.17.)

フェリックス・メンデルスゾーン ファニー・メンデルスゾーン


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