メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲、
ピアノ三重奏曲第1番、ヴァイオリン・ソナタ

(アンネ・ゾフィー・ムター ほか)



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ヴァイオリン界の女帝(?)アンネ・ゾフィー・ムターの、2009年録音。
フェリックス・メンデルスゾーンの生誕200年に合わせて発売されたもの。

メンコン(ヴァイオリン協奏曲)メントリ(ピアノ三重奏曲第1番)(免取? 面取り?)という超有名曲に加え、
あまり知られていないメンソナ(ヴァイオリン・ソナタ)(そんな呼び方はありません、念のため)まで収録するサービスぶり(77分以上)

おまけにDVDがついていて、水着姿のアンネ・ゾフィー・ムターがビーチを駆け回る姿が収録されている・・・というのは嘘で、
CDと同じ音楽を演奏風景付きで収録、さらにムターがメンデルスゾーンについて語る18分のドキュメンタリーが入ってます。
こうなるとどちらがオマケかわかりません。

最近のムターは主情的というか、大胆で個性的な表現をするイメージがあったのですが、
ヴァイオリン協奏曲は、速めのテンポですっきり弾かれたスリム&スマートな演奏でした。
演奏時間26分たらずと短めで、かのハイフェッツの名録音すら思わせる切れ味。
きちんと均整のとれた音楽のプロポーションと、デリケートな息づかいの両立。
でも意外なところでタメを効かせたり、フレーズの表情づけを変えたりして、聴き手に「オヤ」と思わせる瞬間も抜かりなく配置。
これがライヴなんだからスゴイっす。

 

ピアノ三重奏曲第1番は、リン・ハレルのチェロと、元夫・アンドレ・プレヴィンのピアノとの共演。
最高に素晴らしいのがプレヴィンのピアノ。
年の功でしょうか、元妻のヴァイオリンをあるときは煽り、あるときは抑え、老獪の限りを尽くすプレヴィン
しかしその抑えも効かず、ときに破れかぶれに突っ走る荒馬のようなムターのヴァイオリン。
そんな元夫婦コンビを横目に、淡々と自分の仕事をこなすハレルのチェロ。
セッション録音ですが、ライヴでノリノリな演奏は破天荒と言っても良いくらい。
フィナーレでは3つの楽器がくんずほぐれつ、一気呵成の大団円へ。

 

この曲に関しては、スターン/ローズ/イストミンの1966年録音をこよなく愛する私ですが、この録音もとっても良かった・・・というかメチャ面白かったっす!
ただし、まとまりとか優雅さとか洗練を期待しては・・・いけないっすよね。
(スターンの録音は、激情と洗練のバランスが絶妙なんですよ・・・)


ヴァイオリン・ソナタ ヘ長調は、未出版だった作品。
友人のフィルディナント・ダヴィッド(ヴァイオリン協奏曲の初演者)のために書きましたが、フェリックス君、「もう少し手直ししよう」と思いながら、忙しさにまぎれてそのままに・・・・・。
埋もれていた楽譜を1952年にメニューインが校訂して出版しました。
のびやかでどこにも陰りがない、春の陽光のようなソナタです。
フェリックス君がちゃんと改訂していたら、さらに素晴らしい曲になっていたかも、と思うと残念ですが、ムターの演奏はとても素晴らしいです。

 第3楽章
 

(11.8.3.)


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