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(素人による音楽形式談義・第4回)

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64より第一楽章

文中のタイミング表示は、このCDによっています。 
   二十世紀最高のヴァイオリニストとも言われるハイフェッツの、切れ味抜群の名演です。
  



Amazon.co.jp : メンデルスゾーン&チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲

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メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 第1楽章


アレグロ・モルト・アッパッシオナート(急速かつ情熱的に)と楽譜に指示されているわ。

ガツガツ、ムシャムシャ、パクパク、モグモグ・・・ううっ、の、喉につまったあっ・・・!!

急速かつ情熱的な食べっぷり。 いいかげんにしとかないと、お腹こわすよ。
   まず提示部、オーケストラのさざ波のような伴奏にのって、独奏ヴァイオリンに、有名な、哀愁に満ちた第一主題が登場よ。



ごっくん、ぷはー、食った食った、さあ聴くか。 お、このメロディ知っとるぞ! 

そのおっさんくさいノリ、なんとかしなさい!
   独奏ヴァイオリンがひとしきり活躍したあと、主題は0:50からオーケストラに移り、独奏は少しお休み。
   1:17、オーボエと第一ヴァイオリンにホ短調で経過主題(譜例2)が。 後々、重要な役割を担うフレーズなのよ。



これが? なんかクネクネした、変哲のないメロディだけど・・・

これがどう料理されるか、あとのお楽しみね。 譜例2はすぐに独奏ヴァイオリンで繰り返され、次々に技巧的なフレーズを繰り出していくの。
  この変化に富んだ経過部、単なる主題のつなぎではなく創意と工夫がいっぱいで素晴らしいわ。

わあ、華やかでドラマティックでゴージャスだわ。 これぞクラシック〜! 欧州300年の伝統を思い知れ!って感じね。

また意味不明なことを・・・。 2:25第二主題(ト長調、譜例3)。フルートとクラリネットが優しく歌う。



満腹のうえにこんなメロディ聴かされて、ワタシもうオチそうです・・・眠りに。

第二主題が独奏ヴァイオリンに引き継がれ、夢見るようなフレーズがしばらく続くと、3:19で提示部はおしまい。
   実はこの楽章にははっきりした小結尾がないの。そのため、かえって流れるように進んでいくのね。提示部の繰り返しもなしよ。
   というわけで、3:23から展開部

え、もう展開部? あ、そうか、小結尾がないから・・・

提示部からそのまま引き継ぐ形で独奏ヴァイオリンが第一主題の変形を出し、 さらに細かいフレーズをいろいろ続けてゆくの。
   やがて木管に第一主題の断片が現われはじめ、さらに独奏が第一主題音型を大見得を切るようにきっぱりと奏で、
   それを繰り返しながらひとつのクライマックスを形成。

ほとんど第一主題だけが展開されるのね。

4:30、経過主題(譜例2)が独奏ヴァイオリンにはっきりと登場。 そのあと、独奏が経過主題の音型で舞い踊るのに、
   木管楽器が第一主題でからんでゆくわ。

あのクネクネした経過主題、なかなかいい働きをしてるじゃないの。

第一主題はいつのまにかオーケストラの総奏に移り、5:11から独奏も第一主題の断片を演奏しつつ、
   曲はだんだん静まってゆき、5:43、オーケストラに第一主題の音型が大きく出て、カデンツァに突入!

え、ここでカデンツァ

この曲は展開部の最後にカデンツァが来るの。当時としてはとっても独創的な構成よ。
   カデンツァは5:54から7:18まで。当然オーケストラは沈黙。
   19世紀に入ってからはだいたいそうなんだけど、この曲のカデンツァはきちんと楽譜に書き込まれていて、即興の入る余地はないのよ。

アドリブは駄目なのね。ちょっと淋しいかな〜。

カデンツァは主にトリルとアルペジオ(分散和音)の組合せでできていて、第一主題とも第二主題ともあまり関係ないの。 でもとても美しいわ。
   カデンツァの終わりは、細かいアルペジオの繰り返しになり、それを伴奏として、7:20からフルートとクラリネットに・・・

おっ、第一主題だ! ひょっとして再現部に入ったの? 提示部とはずいぶん感じが違うわね〜。

うん、見事な再現部の入りでしょ。 古典派に続くロマン派の時代は、このように提示部とはまた違うアレンジで主題を再現することが多くなってくるの。

曲に変化がついて、おもしろいよね。

さて第一主題は独奏ヴァイオリンに渡されることなく、曲はすぐに経過部へ。
   第一主題は展開部でしつこく扱ったので、ここではあっさり流すのね。

なるほど〜。

7:38、経過主題がオーケストラに再現するけど、これも独奏がさらりと繰り返すだけ。
   一方、8:07から再現される第二主題は、展開部で出てこなかったからでしょうね、じっくり、たっぷり歌われるの。

ちゃんとバランスを考えて作っているんだ。

9:05から長〜い結尾部になります。 まるで第二展開部みたいなノリで第一主題が展開されるでしょ。
   10:00、独奏がまた大見得を切るようなフレーズで曲を盛り上げるわ。

いよいよ最後のクライマックスね。

10:16から、独奏による経過主題が大活躍、ドラマティックに、情熱的に楽章を閉じるの。

うーむ、この経過主題(譜例2)、何だかすごい名旋律のように思えてきたわ。

でしょ。 それにしてもメロディの美しさ、巧みな構成、華麗な技巧、なんど聴いても名曲だわ。
  もういちど違う演奏で聴いてみる?

   



メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲について


フェリックス・メンデルスゾーン(18091847)は、ドイツのライプツィヒという街に、銀行家の御曹司として生まれたの。

御曹司ってことは・・・お金持ちだったのねー!

よだれふきなさい。大富豪だったらしいわよ。そのうえ芸術や学門に理解のある家庭で、
   自宅のサロンにはゲーテヘーゲルも出入りしていたというわ。

うーん、よくわからないけど、すごい、すごいわ〜。

メンデルスゾーンは、子供の頃から作曲の才能を発揮して、10代にはもう一人前の作曲家として認められていた、早熟な天才だったの。
   このヴァイオリン協奏曲1838年、28才の時に書き始められたんだけど、何度も手直しして、結局完成したのは1844年のことだったのよ。

へえ〜、6年もかかったの。

天才ではあったけれど、基本的にじっくり時間をかけて作曲する人だったみたい。
   交響曲第3番「スコットランド」にも12年をかけているし、第4番「イタリア」は初演の後もいろいろ手を入れて、
   とうとう生きているうちには楽譜を出版しなかったの。

意外に生真面目なお坊ちゃまだ。

このヴァイオリン協奏曲は3つの楽章からなり、切れ目なく続けて演奏されるのよ。
   第2楽章はアンダンテ、三部形式の優美な音楽。 第3楽章は、序奏のついた、華麗なソナタ形式の楽章よ。
   ロマン派時代に書かれたヴァイオリン協奏曲のなかで、もっとも人気のある曲といえるかも。

今度、全曲聴いてみま〜す。最後まで起きていられれば。

なお、フェリックスのお姉さん、ファニー・メンデルスゾーンも、最近作曲家として再評価されているわ。


★      ★      ★      ★      ★

ところで、クラシックの形式は、ソナタ形式だけじゃないのよ。

ええっ、ということは、まだ終わりじゃないの!? わたし遊びに出かけたいんだけど。

まあそう言わずに(むんず)、もう少しレクチャーしてあげましょう。

ひええ〜。

というわけで、次は「三部形式」のお話です。 → 次のページ「三部形式」へ 

(05.8.4.記)





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