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(素人による音楽形式談義・第5回)

3.その他の形式

@三 部 形 式

   


三部形式とは、A→B→A という形式です。

これはわかるよ。小学校で「サンドイッチ形式」って習ったような・・・あ、またお腹すいてきた。

胃袋が4つあるとしか思えない、この子・・・。

モグモグ・・・

反芻せんでよろしいっ!
   古典派時代、交響曲の第3楽章はメヌエットまたはスケルツォという、三拍子で三部形式の音楽だったの。
   ゆっくりした第2楽章が三部形式という場合も多いわね。 もちろんそれ以外にも三部形式の曲はたくさんあるけれど。

そりゃまあ、たくさんあるでしょうね〜(投げやり)。

実例をひとつご紹介。ブラームスの交響曲第3番から第3楽章
   この楽章は三拍子ではあるものの、メヌエットでもスケルツォでもなく、交響曲の第3楽章としてはちょっと風変わり。
   でもとてもきれいな曲よ。 三部形式としても、少々凝っています。



ブラームス/交響曲第3番ヘ長調作品90 第3楽章

文中のタイミング表示は、このCDによっています。 若くして事故死した悲劇の指揮者・ケルテスの名演です。
   ウィーン・フィルのまったりした響きがとても美味。 


Amazon.co.jp / ブラームス:交響曲第3&4番

ブラームス:交響曲第3番・第3楽章

この楽章の調性はハ短調、テンポはポコ・アレグレット(多少速めに)。
   第一部分1:48まで)  まず、チェロが主題を奏でる(譜例1)。
   ブラームスの数あるメロディのなかでも、屈指の美しさを誇る名旋律ね。
   ヴァイオリンやヴィオラが繊細に伴奏をしてるのにも注目、というか注耳。



きれいなメロディ。晩秋の風景が脳裏に浮かぶっていうか。

0:27から、主題はヴァイオリンで繰り返され、 0:50から、チェロに慰めるようなメロディが出るの。
   これにはヴァイオリンも加わるわ。 半音階進行で、ためらうようなフレーズを経て、1:25、今度はフルートとオーボエが主題を奏でてゆくの。

哀愁&憂愁の世界ね。すごく眠・・・、じゃなかったロマンティック〜!

1:50から第二部分(中間部) まず、木管に小さく跳ねるような新しいフレーズが(譜例2)。



踊っているみたいな感じね。でもやっぱり淋しそう。

2:25、弦楽器に新しいメロディが登場(譜例3)。



やさしく包み込んでくれるようなメロディだわ。

2:45、また木管の淋しい踊り。3:01、弦がもう一度、譜例3を奏でると、木管が最初の主題を思い出すようなそぶりを見せながら、
   第三部分につながってゆくの。

中間部といっても、雰囲気的には第一の部分とあまり変わらないね。

この曲の場合はそうね。 普通はコントラストを際立たせることが多いんだけど。 さて第三部分3:34から最後まで。

おお、主題が戻ってきた。これは・・・ホルンかな?

そう、第一部分ではチェロが弾いた主題を、ホルンが演奏して、4:01からオーボエにバトンタッチ。
   次の慰めるようなメロディは、ファゴットとクラリネットが担当、そして5:00から、主題はヴァイオリンで切々と歌われるの。
   5:26から結尾部(コーダ)ね。一度小さく盛り上がってから、ため息をつくように寂しげに曲を閉じるの。

哀愁に満ちた曲だったわね。 きれいだけど、でもクライな。 そこまで落ち込まんでもええやろ、と言ってやりたいね。
   ところで第三部分は、第一部分とはアレンジを変えていたわね。

古典派時代のメヌエットでは、第三部分は第一部分の単純な繰り返しだったんだけど、
   ロマン派を経てブラームスあたりになると、少々手が込んでくるわけね。
   第一部分では主題はまず弦楽器に出て、管楽器に受け渡されたでしょ。
   第三部分では、それが逆転していることに気がついたかな。
   中間部でも管と弦が交互にメロディを奏でるなど、ブラームスはここでは、管と弦の掛け合いを強く意識しているみたいね。

作曲家さんって、いろいろ考えながら作ってるのね。


ブラームスの交響曲第3番について

ヨハネス・ブラームス(18331897)は、4曲の交響曲を作ったんだけど、4曲とも傑作として今でも盛んに演奏されているわ。

打率10割! それって凄いことじゃないの。

そのとおり。残した交響曲すべてが文句なしの傑作といえる作曲家は、他には・・・あまりいないのよねえ。
   マーラーは7番あたりがネックだし、ブルックナーも1番や2番は・・・しいて言えば、やっぱりベートーヴェンかしら。

ところで、ブラームスって一生独身を通したんだっけ。

そう。若い頃自分を引き立ててくれたシューマンの妻、クララに対して、生涯恋心を抱いてたと言われていて、
   とうとう結婚しなかったの。

「秘められた愛」か。ロマンティック〜ともいえるけど、ちょっと粘着な、アブナイものも感じるぞっ。

この第3交響曲は、1883年、50才の夏に保養地で作曲された作品。
   第一楽章はアレグロ・コン・ブリオ、力強さと穏やかさが同居したソナタ形式。
   第二楽章はアンダンテ、素朴な雰囲気の三部形式。  第三楽章はさっき聴いたわね。
   第4楽章アレグロは、ヘ短調で突進するフィナーレ。最後はヘ長調となり、第一楽章の第一主題を回想して曲を閉じるの。

全曲聴いて見ようかな〜。 最後まで起きていられれば。

全部で40分足らずの曲。第3楽章は映画にも使われたりして、ブラームスの交響曲のなかではもっとも有名な楽章ね。
   あとこの曲の特徴として、4楽章すべてが弱音で終わる、というのがあって、これもちょっと珍しいかも。

   じゃ、つぎは「ロンド形式」ね → 次のページ「ロンド形式」へ


(05.8.12.記)




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