(素人による音楽形式談義・第6回)
3.その他の形式
A ロ ン ド 形 式
「ロンド形式」。 知ってるかな?
気温とか計ったりする道具・・・
それは「温度計」!
じゃあ、ビッグ・ベンとか、バッキンガム宮殿とか・・・
・・・・???
もー、「それは『ロンドン景色!』」って突っこんでくれなきゃ!
うーん、考えオチッ!! 座布団全部持ってけ!!
ひええ〜〜。 どってん(ひっくりかえったあ)
ロンド形式は、主題がいくつかのエピソードをはさんで繰り返される形式。
古くはバロック時代のフランスの器楽曲などで、ロンド主題を仮にAとすると、
A→B→A→C→A→D→A→E→A・・・
という形で使われていたけど、古典派時代(18世紀中頃)には基本的に、
A→B→A→C→A→B→A
という形に整理されたの。
C部分で、それまでに出た主題を展開するというパターンもあって、その場合は「ロンド・ソナタ形式」と呼ばれるの。
長ゼリフご苦労さまです。 しかしAとかBとかいわれてもピンとこないのよね〜。
じゃあ、実際に聴いてみましょ。 ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」の第3楽章ね。
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13「悲愴」 第3楽章
文中のタイミング表示は、このCDによっています。 二十世紀の鬼才・ホロヴィッツの、意外にシンプルな名演です。
Amazon.co.jp.:Horowitz Beethoven Sonatas
HMV : ベートーヴェン/「悲愴」「月光」「熱情」
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ「悲愴」第3楽章
まずロンド主題(A)(譜例1)。 きれいでちょっぴりセンチメンタルなハ短調のメロディ。
ベートーヴェンらしくないかわいらしいメロディね。 顔に似合わないというか・・・
ベトちゃん怒るわよ。 0:21から転調のための経過部に入り、第一副主題(B)は0:30から変ホ長調で(譜例2)。
玉を転がすような華麗なパッセージを間にはさんで、0:51からは穏やかなもうひとつの副主題(譜例3)。
つまり、Bにあたる主題がふたつあるわけね。いつでもそうなの?
いや、ちょっと例外的。 にぎやかな経過句をはさんで、1:16からロンド主題(A)がハ短調で再現。
1:36、第二副主題(C)が変イ長調で登場(譜例4)。この副主題がしばらく対位法的に展開されるわ。
賛美歌みたいな感じのメロディね。 でも展開の最後はけっこう盛り上がるわね。
いわばこの楽章のクライマックス、聴かせどころね。
2:30、ロンド主題(A)三回目の登場。 2:46から、ふたつの第一副主題(B)が順に再現。ただし調はハ長調。
ロンド形式でも再現のときはもとの調にもどるのか。 あ、3:31からまたロンド主題が戻ってきた。 四回目ね。
これが最後よ。そのままロンド主題によるコーダへ。
終わり方もカッコいいわね。 最後にいったん速度を落としてから、一気にパン!と曲を閉じるのがクールっていうか。
型通り、A→B→A→C→A→B→A になっていたでしょ。 形式的によく整った、美しい曲よね。
ホントにきれいな曲だわ。ベートーヴェンって、こんなのも作ってたんだ。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」について
ベートーヴェン(1770〜1827) はピアノ・ソナタを全部で32曲残したの。
後期の曲は、型にはまらない深遠な曲が多いんだけど、この曲は初期の作品で、きちんとした形式で書かれているわね。
ベートーヴェン何歳の作なの?
28歳。とっても人気がある曲よ。 第2楽章のメロディもとても有名で、1980年代にはアメリカで歌詞をつけて歌われ、
"Midnight Blue"というタイトルで大ヒットしたこともあるわ。
全曲聴きたくなってきたな。 最後まで起きていられれば。
全3楽章で20分ほどのコンパクトな曲よ。 あ、それから、ビリー・ジョエルも、"This
Night"という曲で、やはり第2楽章のメロディを引用しているわ。
お願いだから、歌うのだけはやめて〜。
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(05.8.27.)