シューベルト/ピアノ三重奏曲第1番&第2番
インマゼール(ピアノ)、ベス(ヴァイオリン)、ビルスマ(チェロ)



Amazon.co.jp : Schubert: Piano Trios D 898 & 929


シューベルト(1797〜1828)の最晩年(といっても31歳で死んじゃったんですが)には、長くて・重くて・暗い傑作がたくさん。
弦楽五重奏曲、3つのピアノソナタ、即興曲集、そして歌曲集「冬の旅」・・・。
どれも超名曲ですが、お、重いよ〜、暗いよ〜・・・。
交響曲「ザ・グレイト」は、長くて重いけど明るいぞ、という声もありますが、
最近の研究によると、これは1825年以前の作曲、最晩年ではないそうです。

さて、暗くうっそうと繁るシューベルト森の中に、突如突っ立つ、フル・デコレーションのクリスマス・ツリーみたいな曲があります。

ふたつのピアノ三重奏曲です。
いやあ、これは明るい。 聴いてて楽しいです。 長いことは長いけど。
2曲を1枚のCDに収めることは通常は不可能、合計80分を越えます。
ところが、このインマゼール、ベス、ビルスマ盤、つ、ついに不可能を可能にしたのですっ!
・・・って、速いテンポで演奏してるだけですが(合計78分30秒)。
もちろん、ただ速いだけのせかせかした演奏ではありません。 音楽性抜群の名演です。

ピアノ三重奏曲第1番、第1楽章、思わず「元気があってよろしいっ!!」と花マルを押したくなる、第1主題の輝き。

  (このCDの演奏ではありません)

第2楽章は、まったり&ぬくぬく、ぬるめのお湯で半身浴してるような音楽、風邪の予防には欠かせません。

 (このCDの演奏ではありません)

第3楽章は民謡風の主題によるスケルツォ。 素朴で人の良い田舎のおじさんを連想します。
え、自分のことかって? いや私はそんなに人は良くないかも・・・。

 (このCDの演奏ではありません)

第4楽章は、春の野原で小動物が遊びたわむれて飛び跳ねているようなロンド。
人懐っこいメロディが次から次へと登場して聴き飽きません。

 (このCDの演奏ではありません)

ピアノ三重奏曲第2番第1楽章、重厚で力強い第一主題と、続くピアノのささやくような副主題との対比が魅力。

 (このCDの演奏ではありません)

第2楽章は、荒野を一人行く旅人のイメージ。 後半は盛り上がります。 ドラマティックな楽章。

 (このCDの演奏ではありません)

第3楽章は、カノンの手法を使ったスケルツォ。 これはかなり独創的では。

 (このCDの演奏ではありません)

第4楽章、人懐こいメロディが次々に、あっちに現れ、こっちに隠れする、長大で華やかなフィナーレ。
いままでの楽章のテーマも顔を出します。

 (このCDの演奏ではありません)

さてシューベルトといえば、世間に認められることなく貧困のうちに病死という、「名もなく貧しく美しく」的イメージがあります (死因が梅毒というのはちょっとアレですが)。
しかし最近の研究によると、最後の数年はかなり金回りが良かったのではないか、と言われているそうです。
1825年にはウィーン楽友協会の補欠理事となり、27年には正規の理事に昇格、
「ピアノ三重奏曲第2番」を初演した1828年3月の演奏会では、一夜にして320フローリンを稼ぎ大成功。
(ちなみに当時の中流家庭の年収が500〜700フローリンらしいです)

つまり決して無名でも貧乏でもなく、着実にウィーン音楽界でのし上がり、地位を固めつつあったわけです。
その途上での病死(1828年11月19日)は、やはり悲劇的ではありますが・・・
あと10年長生きしたら大金持ちになっていたかも。

(05.11.26.)


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