ルーズ・ランゴー/交響曲第1番「岩の田園詩」ほか
セーゲルスタム指揮/デンマーク国立放送交響楽団
(CHANDOS CHAN9249)



Amazon.co.jp : Langgaard: Symphony No. 1

デンマークが生んだ不遇の天才・ルーズ・ランゴーRued Langgaard 1893〜1952)。
交響曲第1番「岩の田園詩」(←どういう意味?)は、驚くなかれ14歳で作曲開始し、17歳で完成。
全5楽章、60分以上を要する、後期ロマン派風の堂々たる大曲です。
マーラー、R・シュトラウスなどの影響が濃厚ですが、すでに独自の魅力も発散していて、とても10代の少年の作品とは思えません。

出だしからもんのすごーく力が入っていて、「渾身の一撃!」って感じなのは、若さのなせる業でしょうか。
その力みが決して上滑っておらず、風格まで感じさせるのは、天才の業でしょうか。
しかし全然「田園詩」つう感じじゃないよな。

 第1楽章「波しぶきと見え隠れする太陽」
 

第1楽章はソナタ形式で書かれています。
短く激しい序奏に続く決然とした第一主題のカッコよさ、いきなりもっていかれます。
全休止を経て、ホルンに導かれて4:10から平和な感じの第二主題。
7:15あたりから展開部、主に第一主題が嵐のように展開されます。
14:10から再現部、第一主題が型どおりに再現され、16:42から第二主題が再現、ハープのオブリガードがオシャレです。
20:00すぎからふたたび不穏な感じになり第一主題が戻ってきて、規模の大きなコーダになります。

 第2楽章「山の花々」
 

ロマンティックでやさしい緩徐楽章。
柔らかな弦の響きで開始、第1楽章で疲れた耳が癒されます。
4分過ぎから中間部、弦のトレモロの上にオーボエとホルンのアンサンブルが幻想的。
ついでヴァイオリン・ソロが愁いを帯びた歌を歌います。
7:05から最初の主題が戻ってきて、慰めるように穏やかに楽章を閉じます。

 第3楽章「伝説」
 

第3楽章も緩徐な楽章ですが、第2楽章より暗く沈んだ雰囲気。
哀しみに満ちたメロディは、葬送行進曲風でもあります。
徐々に力を増し、3:30あたりでクライマックスとなり、ふたたび静まっていきます。

 第4楽章「登山」
 

力強い楽章、一種のスケルツォでしょうか。
ゴツゴツした主題が決然たる様子で突き進みます。
2分あたりから中間部、ちょっと静かになります。
4分あたりから主部が戻ってきます。

 第5楽章「勇気」(フィナーレ)
 

序奏部で第1楽章第一主題がちょっと回想されます。
ホルンに導かれるように0:33から勇壮な第一主題が呈示されます。
2:05から第二主題部、しっとりと優しい響きのつらなり。
ふたたびホルンに導かれて4:33から展開部へ、ここでは全休止が何度も出てきて思わず「ブルックナーかっ!」と突っ込みたくなります。
8:22に第一主題がはっきりと現れ、展開されます。
クライマックスのあといったん静まり、11:09から再現部。
12:20から第二主題部、徐々に盛り上がって16:20から第一主題によるコーダへ。
18:44には第1楽章第一主題が長調に転じて再登場、輝かしくド派手に全曲を閉じます。


1913年にベルリンで初演され、大好評。
意気あがるランゴー、母国デンマークでの演奏を計画するものの、曲の長さと編成の大きさが裏目に出たのか、なかなか実現しません。
このあたりから、ランゴーの芸術家人生の歯車が狂い始めます。
自らの才能への自信と、母国の音楽界から認められない焦り・・・。

ランゴーは、めげずに作品を発表し続けますが、作風は次第に前衛的・革新的になってゆき、
トーン・クラスターミニマル・ミュージック先取りする曲まで書いてしまう一方でシューマンみたいなロマンティックな曲も作ります。
音楽界の理解は得られず変人扱い、音楽の仕事にもなかなか就けず、忘れられていきます。
48歳にしてようやくデンマークの片田舎・リーベ教会のオルガニストに就任しますが、結局、作曲家としては、ほとんど評価されなかったようです。

しかし没後、ランゴーの音楽はリバイバルされ、
現在では「20世紀デンマークのもっとも才能に恵まれた作曲家」と呼ばれています。 ニールセンより上ってことですか?
16の交響曲、8つの弦楽四重奏曲、オペラ「アンチ・キリスト」など、約400の作品を残しています。

このCDには、ランゴーのほぼ最後の作品と思われる、合唱と管弦楽とオルガンのための「深き淵より」(1952)も収録されています。
自らのためのレクイエムともいえる宗教的な曲で、激しさと静けさがドラマティックに交錯します。

 深き淵より
 

ランゴーという作曲家に、がぜん興味がわいてきました。
いろいろ聴いてみたいと思います。

(06.7.28.)


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