ランゴー/弦楽四重奏曲集 第1集
(ナイチンゲール四重奏団 2010〜11録音)



Amazon.co.jp : ランゴー:弦楽四重奏曲集 Vol.1

HMV : ランゴー/弦楽四重奏曲全集 Vol.1

Tower@jp : Langgaard: String Quartets Vol.1

<収録曲>
ランゴー/弦楽四重奏曲第2番,第3番,第6番
「おお、血と涙にまみれた御頭よ!」による変奏曲




一日の仕事を終えて家に帰り、さて今日も食事前にカクテルでも楽しもうかと
気分よくシェイカーなど振っていますと、キッチンで夕食の支度をしているニョウボが

 「ぷぷっ」

「・・・なにがおかしいの?」とたずねると、

「いやー、アナタがシェイカー振るの見てると、何故かオサルがシンバルを叩くおもちゃを連想しちゃって」

 

         



「全然違うやん! 動き違うやん! 道具も違うやん!」

「うーん、それはそうだけど、でも連想しちゃうんだからしょうがな・・・ぷぷっ」

 ・・・・・・ふっ、今夜のサイドカーはほろ苦いぜ。


さて、ニールセンと並んで20世紀デンマーク最高の作曲家といっても過言ではない、
多分過言ではないと思う、過言じゃないんじゃないかな(?)ルーズ・ランゴー(1893〜1952)。
デンマークのダカーポ・レーベルから、弦楽四重奏曲集がリリースされました。

ランゴーには番号つきの四重奏曲が6曲と、ほかに弦楽四重奏のための作品が数曲あります。

 じつはランゴーの弦楽四重奏曲は、90年代にコントラ四重奏団による2枚組のCDが同じダカーポ・レーベルから出ていて、私も所有してます。
 今回のアルバムの収録曲を見ると・・・・・・ありゃあ、見事にかぶっているぞ
 
どういうつもりなんだろう、ダカーポさん。
全部持ってる曲だし、かねてからCDの収納には頭を悩ませているし、安くはないレギュラー盤だし、今回は購入は見合わせ・・・・・・
と思っていたのに、どこでどう魔がさしたのか、ふと気づけば買っておりました!

 ・・・はっ、お、俺はいままで一体なにを・・・?

まあ、買っちゃったものは仕方ないわな。
どれも素晴らしい曲ですし。

疾走する蒸気機関車を描写した第2楽章をもつ第2番(1918)(オネゲル「パシフィック231」より早い!)は聴きものです。
ミニマル・ミュージックの元祖という噂も。

 弦楽四重奏曲第2番・第2楽章"Train Passing By"
 

個人的に一番好きなのが第3番(1924)。
激しい嵐のような第1楽章はときに無調に傾き、軽妙でユーモラスなランゴーらしい第2楽章スケルツォでは、
ラストでラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」と同じ主題がチェロで叩きつけるように演奏されます(ラヴェルより早いですが関連は不明、たぶん偶然)。
第3楽章は激情と緊張をはらみながら推移し、最後に美しいコラールが奏でられて気高い終結へ。
大曲を聴いた印象が残りますが、演奏時間はわずか15分足らず、内容が濃いんです。

 第2楽章 スケルツォ
 

 ナイチンゲール四重奏団の演奏は、コントラ四重奏団に較べると、鋭さ20%増しって感じ。
 スリリングかつ爽快でダイナミック、これなら再録音するのも納得です。
 ちなみに録音もこっちが上。 我が家のオンボロ・オーディオで聴いてもわかります。

第6番(1918〜19)は、平穏で優美な美しさが特徴的な単一楽章の曲。
わずか3日間で書かれたんだそうで、本当だとしたら天才的。
先祖返りしたみたいに保守的な響きで、作曲家あてクイズをやれば、「シューマン? ドヴェルザーク? グリーグ?」といった答えが続出しそう。
しかし形式は超自由、好き勝手というかほぼ無構造なところがいかにもランゴー。
しかもひたすら美しく優雅・・・不思議で魅力的な曲です。

 

最後に収められているのは「おお、血と涙にまみれた御頭よ!」による変奏曲(1914/1931)。
ホラー小説みたいなタイトルですが、主題にした讃美歌がそういう題名。
生前には一度も演奏されなかったそうです。
もうちょっと穏便な名前の主題を選んだほうがよかったのではないかと思わずにはいられません。
主題と7つの変奏からなる15分余りの充実した作品で、独立した弦楽四重奏曲と言っても良い立派な作品。
作曲家当てクイズをすれば、

 「チャイコフスキー・・・にしてはロシアっぽくないなあ、ブラームス?」

といった答えが返ってきそうです。

ランゴーの代表作は、やはり16曲の交響曲ですが、弦楽四重奏曲もなかなかのものだと思うのであります。

録音風景


(2012.6.3.)


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