ランゴー/交響曲第15&16番ほか
(トマス・ダウスゴー指揮 デンマーク国立交響楽団)



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Tower@jp : Langgaard: Symphonies No.15 & 16, etc


<曲目>
頌歌(グリーグの死に)
管弦楽のための音詩「スフィンクス」
ヴィズビェア頌歌
デンマーク放送
「馬鹿げたこと?」
交響曲第15番「海の嵐」
交響曲第16番「太陽の氾濫」



ルーズ・ランゴー交響曲全集完結!


デンマークの無名作曲家、ルーズ・ランゴー(1893〜1952)。

なぜかこの偏屈おじさんの交響曲に取り付かれてしまった私です。
ふと気がつけば全交響曲のレビュー(こんなものがレビューと言えればな!)を達成しかけているではありませんか。
いったい何がこんなものを私に書かせるのでしょう?
悪いものに憑かれているとしか思えませんなあ。


交響曲第15番「海の嵐」(1937/1949)

ランゴーは1937年に、有名な詩人ラーセンの詩を用いて「バリトン独唱と男声合唱と管弦楽のための『夜の嵐』」を作曲しました。
しかし、いちども演奏されることはありませんでした。 くすん。

時は流れて12年後、1949年2月のある夜、ランゴーは散歩にでかけました。
夜の散歩が趣味だったそうです (←2月ですよ、寒そう〜)。
その夜は嵐が吹き荒れていました (←おまけに危ない!)。
ところが、嵐の夜に散歩して変なスイッチが入ったのでしょうか、午前4時に帰宅したランゴーは、いきなり新しい交響曲のスケッチにとりかかり、
7時にはだいたいできちゃったと言うからびっくりです (17分程度の曲とはいえスゴイ)。
終楽章には以前作曲した『夜の嵐』をそのままもってきました。
スイッチ入っちゃってたランゴーは、つづいてわずか10日でオーケストレーションも完了!

 ・・・しかし例によって作曲者の存命中に演奏されることは無く、初演は死の24年後、1976年でしたとさ。 くすん。

ランゴーはローデンバックの小説「死の都」が好きだったそうで(コルンゴルドがオペラにしたあれですね)、そこからもインスピレーションを得ているそうです。

わずか1分ほどの第2楽章(短いワルツ)を別にして、青い炎のような暗い情熱に浮かされたこの交響曲は、第10番「ここは雷の住みか」などとともに「ランゴーの暗黒面」が前面に現れた力作。
響きはワーグナー/R・シュトラウスをやや前衛にした感じです。

 第1楽章
 (緊迫感あふれるカッコイイ楽章)

 第4楽章「夜の嵐」
 (勇壮な男声合唱とバリトン独唱をお楽しみください)


交響曲第16番「太陽の氾濫」(1950〜51)

交響曲第11番「イクシオーン」とそっくりな主題で幕を開ける、全5楽章・21分ほどの華やかで堂々たる交響曲。
第15番とは対照的に、「ランゴーの陽性面」がよく出たコケオドシ風祝典的豪華絢爛楽章の連続です。
「エレジー」と題された第4楽章もタイトルほど悲しげでなく、甘くロマンティックなマーラー風アダージェット、天国に遊ぶランゴーって感じですが、
センチメンタルなところが感じられず、なんかドライなのがこの人らしい。

 第1楽章
 (こりゃまた派手ですなあ・・・)

 第4楽章 エレジー
 (マーラーのアダージェットに負けない美しさ。幸福そうであんまりエレジーっぽくない)

この曲、明るく陽気に聴こえますが、じつは衰えゆく健康のなかで書かれ、自身も「最後の交響曲」と意識していたらしいです。
タイトルは「天国に入るとき、太陽の氾濫のようなまぶしい光に包まれる」ことを意味しています。

高らかに鐘が鳴り響く壮大な第5楽章・ファンファーレ風フィナーレを聴きながら、光に包まれて天国に昇っていく偏屈おじさん・ランゴーを想像してあげてください。
この曲も初演は1966年、ランゴーが天国に昇ってから14年後でした。 くすん。

 第5楽章 フィナーレ
 


偏屈おじさん・ランゴー
髪型がチャーミングです



なお、このCDには、ランゴーの管弦楽曲も何曲か収められています。
10代の作品である「グリーグの死に」「スフィンクス」を聴くと、ランゴーがまぎれもない天才であったことがよくわかります。

 スフィンクス
 (ミステリアスな音詩)

「ヴィズビェア頌歌」(1948)は、ヴィズビェア教会で行われた歴史イベントのために作曲された3分程度の曲。
1260年のクリスマス・イヴにBishop Oluf Globという人がこの教会の祭壇の前で甥に殺害された故事にちなんでいるそうで、デンマークでは有名な話なんでしょうね。
この曲は珍しく(?)ランゴー存命中の1950年に演奏されています。

 

わずか1分ほどの「デンマーク放送」(1948)は、デンマーク放送のテーマ曲を華やかにというか、悪趣味なまでに大仰にアレンジした曲らしいです。
たまに自作を演奏し放送してくれる放送局への感謝のプレゼント(?)なんでしょうきっと。
でも1976年まで演奏されませんでした。 くすん。

 

「馬鹿げたこと?」(1948)は、合唱と大管弦楽のための作品。
オルフの「カルミナ・ブラーナ」第1曲を思わせる、壮大で緊迫した30小節の音楽が、しだいにテンポを上げながら何度も繰り返されます。
華麗で堂々、祝祭的でスケールの大きな合唱曲ですが、歌詞は「馬鹿げたこと」という言葉を繰り返すのみという「馬鹿げた」曲。
自身の不毛な作曲人生を笑いのめしているのでしょうか(自虐ネタ)。
このCDの録音が初演奏とのことです。

 

やれやれ・・・、当HP迷物、「ランゴー・交響曲シリーズ」、これで終了でございます。
御用とお急ぎでない方は、1,2曲聴いてみられてはいかかでしょうか。
最初に聴かれるなら、交響曲第4番「落葉」、第5番「草原の風景」あたりがよろしいかと。

(09.5.26.)



「木曽のあばら屋」ランゴー/交響曲シリーズです

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お得なボックス・セットが出ました。
思わず買ってしまいそうで怖い(←全部持っとるやないか!)

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Tower@jp : ランゴー/交響曲全集


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