ランゴー/交響曲第4番「落葉」、第5番第1版、第5番第2版「草原の風景」
トーマス・ダウスゴー指揮 デンマーク国立放送交響楽団



Amzon.co.jp : Langgaard: Symphonies No. 4 & 5(T&U)


デンマーク作曲界の異端児にしてひねくれ者、ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard 1893〜1952)。

ワタクシ本人は非常に素直で円満な性格ですが(←自分で言うか)、ランゴーの音楽にはなぜかとても惹かれます。
今までに、交響曲第1番天空の音楽交響曲第2&3番をご紹介してきました.

交響曲第4番「落葉」(1916)は、ランゴーの変人ぶり個性が大きく花開いた傑作。
第3番まではいちおう古典的形式を守っていたランゴーが、いきなり、彼の交響曲の一大特徴「単一楽章で無形式」を前面に押し出してきます。
シベリウスの第7番(1924)よりどれだけ早いんだ・・・(しかもまだ23歳の若造が!)。

響き自体はロマン派マーラーR・シュトラウス風)で分厚く、きれいなメロディも随所に登場、
前衛的な部分もせいぜいニールセン程度で、一聴親しみやすい雰囲気。
ただし全曲は13の短い部分に分かれているものの、これといった形式も脈絡もありません。
13のうち8つの部分には表題がついています。

 森のさざめき
 太陽のきらめき
 雷鳴
 秋の!
 疲れ!
 絶望
 日曜の朝(鐘)
 終わりに!


ビックリマーク(!)のつけ方が妙です・・・。

「悩める主人公がを散策している。 しばらくは太陽がきらめいていたが、やがて雷鳴がとどろく。
 雷がおさまり、『あー、だなあ!』としみじみするものの、思わず『疲れたなあ・・・』と、つぶやいてしまう。
 うまくいかない人生に絶望していると、日曜の朝の教会のが鳴り響き、なんとなく救われた感じで終わる

・・・という流れになるのでしょうか。
表題があいまいな交響詩といえるかもしれません。
要するに「落ちこんだりもしたけれど、わたしはげんきです」って曲ですねっ!(そうかあ?)

でも音楽はどちらかというと華麗派手壮大
でだしからいきなりドッカーン!です、どこか「落ち葉」やねん。
それでも一つ一つの部分がとても美しいうえ、不思議なまとまりもあり、まあ名曲と呼んでも良いんじゃないかと。 私はかなり好きです。

 第1部分 森のざわめき
 

 第4部分 雷鳴 (意外と明るくて賑やか。オーケストレーションの巧みさ!)
 

 第7部分 秋の! (第1部分の主題が再登場します。いやでもこのビックリマークはなに?)
 

 第13部分 終わりに! (堂々たる終結部)
 

交響曲第5番・第1版(1926)、交響曲第5番・第2版「草原の風景」(1931)も単一楽章・無形式。
第1版はランゴーの交響曲で唯一、表題がない作品です。

ランゴーは1917〜18年に「夏の伝説ドラマ」という曲を書き、1920年にそれを改訂して「交響的祝祭劇」という作品を仕上げました。
1926年に「夏の伝説ドラマ」をベースにして作られたのが交響曲第5番・第1版で、
1931年に「交響的祝祭劇」をベースにして完成したのが交響曲第5番・第2版「草原の風景」
両曲には共通の素材が使われているものの、まったく別の曲です。

交響曲第5番・第1版は、弦の渦を巻くようなイントロに続くスケールの大きな主題がたくましく展開され、
その後もさまざまなメロディが現れては消えてゆきます。

 冒頭部
 

この曲の凄いというかワケわからんところは終結部。
冒頭と同じ弦の渦を巻くような動きと木管のコラールの上に、フリージャズかと思うほど奔放自在なヴァイオリン・ソロが唐突に登場、
好き勝手に暴れた挙句、最後にハープがポロロンとやって終わっちゃいます。
なんじゃこりゃー! と言いたくなりますが、とっても独創的な交響曲です、もうたまりません。

 終結部
 

交響曲第5番・第2版「草原の風景(1931)
やはり渦巻くような短い序奏に続いて勇壮に登場する主題は第1版とほぼ同じメロディですが、さらに壮大にアレンジされています。
続いて第二主題風のやさしいメロディも現れ、「お、ソナタ形式?」と思わせます。
が、結局のところこれといった形式はなし。
終わり近くで最初の主題が回帰したりして、ある程度は形としてまとめようとしたのかなランゴーさん。
でも突然ウィンナ・ワルツ風になるところや、唐突な終わりかたは、気まぐれランゴーの面目躍如。
そしてこのダイナミックで壮麗な曲が、なぜに「草原の風景」なのかは、さっぱりわかりません。

 冒頭部分 (堂々としてカッコイイ幕開け)
 

 終結部 (華麗なオーケストレーション、そして唐突な幕切れ)
 

個人的には第1版のメチャクチャぶりのほうが好みかな。

ロマン派の異端児・ランゴー「傑作の森」を収めた一枚であります。

なお、ランゴーの交響曲は全部で16曲。
まだまだ傑作ありますよ。

(08.6.15.)


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