ルーズ・ランゴー/交響曲第9〜11番
(ダウスゴー指揮 デンマーク国立放送交響楽団)
Amazon.co.jp : Langgaard: Symphonies 9-11
Tower@jp : Langgaard: Symphonies no 9-11 / Dausgaard, Danish Radio SO
<曲目>
交響曲第9番「ダグマール王妃の街から」
交響曲第10番「ここは雷の住みか」
交響曲第11番「イクシオーン」
デンマークの変人作曲家・ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard, 1893〜1952)の交響曲、
いつの間にかシリーズみたくなってしまいました・・・。
いままで、第1番、第2&3番、第4〜6番、第7&8番と・・・うわあ、律義に順番に取り上げてきてますね。
私らしくない几帳面さであります。
というわけで今回は第9〜11番。
1940年、ランゴーは47歳にして、やっと教会オルガニストの地位を得ます。
音楽家としてきちんとした職に、生まれてはじめてつくことができたのです。
首都コペンハーゲンではなく、リーベという地方都市ではありますが、
そこは1205年にボヘミアから嫁いできたダグマール王妃が滞在し、またそこで死を迎えたといわれる由緒ある街です。
この街で書かれた交響曲第9番「ダグマール王妃の街から」(1942)は、
安定した職を得て意気揚々、張り切るランゴーの心象風景のような明るい曲。
古典的な4楽章構成で、響きは前期〜中期ロマン派風、一聴するとシューマンやメンデルスゾーンそっくり。
第3楽章では「ダグマール王妃はリーベに眠る」という古謡がチューブラー・ベルでおごそかに奏でられます。
ランゴーの交響曲のなかでも、ひときわ古典的であると同時に賑やかでおめでたい曲。
「俺は由緒ある町のオルガニスト、やったぜー!」という喜びの声が聞こえるようです。
意外と単純だぞランゴー。
第1楽章 ダグマール王妃のリーベへの到着
(壮麗で晴れやか、祝祭的なオープニング)
第3楽章 リーベの大聖堂
(荘厳なチューブラー・ベルの響き)
ところが・・・交響曲第10番「ここは雷の住みか」(1944〜45)は一転して単一楽章・無形式、
標題のない交響詩のような作品で、響きもR・シュトラウスっぽいです。
渦巻く弦、咆哮する管、暗い情熱と緊張感が全体を貫く二十数分。
タイトルはランゴーがよく夏の休暇を過ごしたスウェーデンの景勝地クレンを詠った詩の一節。
じつはこのころランゴーは、エキセントリックな性格が災いしてか、リーベの聖職者やオルガニスト連盟とごたごたが絶えなかったそうです。
おおかたイヤな奴の顔を思い浮かべながら、「コノヤロ、コノヤロ」とか言いながら作曲したんでしょう(←決めつけるなよ)。
意外と単純だぞランゴー(←だから決めつけるなよ)。
とにかく激しい曲ですが、聴き応えあります。
嫌いな奴の顔を思い浮かべながら聴いてください(コラコラ)。
(全曲を通して緊張と闘争の連続)
さらに交響曲第11番「イクシオーン」(1944〜45)は、
ランゴーの全交響曲中屈指の変な曲。
演奏時間わずか6分あまり。
金管が奏でる勇壮なワルツ風の主題が11回繰り返されるだけの作品。
途中で転調したり、ちょっとリズムが変わったりしますが、基本的に同じメロディの反復です。
最後のほうで、6本のチューバ(オーケストラの最前列で演奏するように指定)がユニゾンでワルツ主題に絡み、ヤケクソなまでに賑やかなファンファーレで終わります。
イクシオーンはギリシャ神話の登場人物で、神に逆らったために永遠に回る火車にくくりつけられたそうです。
永遠に回る火車ってどんなのだ・・・?
ランゴーは自身をイクシオーンに擬したのでしょうか。
なお、第9番、第10番はいちおう作曲者の生前に演奏されましたが、第11番が初演されたのは1968年、作曲者の死から16年のちでした。
まあ、なかなか演奏してもらえんわな、こんな変な曲・・・。
そいでもってランゴーの交響曲はさらに妙ちくりんな世界へと進化してゆきます(多分つづく)。
(08.9.3.)
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