ランゴー/交響曲第6〜8番
(ダウスゴー指揮 デンマーク国立放送交響楽団)



Amazon.co.jp : Rued Langgaard: Symphonies 6-8

Tower@jp : Langgaard: Symphonies no 6-8 / Dausgaard, Danish National SO

先日、交響曲第4&5番をご紹介した、デンマークの変人作曲家ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard 1893〜1952)
このヒト取り上げると、ただでさえ少ないアクセスが、さらに落ち込み、しばらくの間もとに戻らなくなるのですよ。
何かの呪いか? それとも「闇の勢力」の陰謀なのか?(←単に皆様興味がないだけですってば)
でもやめられません。
気に入ってしまったのです、ランゴー。


交響曲第6番「天国強襲」(1919)は、
「天国に悪魔の軍団が襲い掛かるが、神と天使たちがこれを撃退する」というストーリー。
二つの主題にもとづく変奏曲ということですが、勝手気ままに書いたとしか思えません。 
例によって形式はあって無きがごとし。
平穏で天国的な冒頭部はとても美しいですが、続いて鐘が鳴り響いたり、ハープのグリッサンドが駆け巡ったり、突然フーガが始まったり、
ひたすら派手にやかましく盛り上がります。
しかし全曲を覆う緊迫感華麗なオーケストレーションにはただただ魅了。
やっぱりこの人の才能と実力、並じゃありません。

 バリエーションU フーガ
 (前衛的で複雑なフーガ。なんとなくシェーンベルクぽい)

 バリエーション V トッカータ
 (軽妙なスケルツォ風に始まり、徐々に緊張を高めてゆきます)

 バリエーション X コーダ
 (鐘が鳴り響き金管が吼える、ド派手なフィナーレ。うるさいっ!)


さて、第4〜6番で独自の「無形式・単一楽章交響曲」を追求したランゴーですが、第7番では突然先祖返り、前期〜中期ロマン派風になってしまいます。
初期の第2番第3番では、当時の最先端サウンドともいえる、マーラーやR・シュトラウス顔負けの重厚でむせ返るような後期ロマン派世界を展開していたのに・・・。
本当に変なヒトです。


交響曲第7番「ホルメン教会のトアデンスキョルのもとで」(1925〜26)
4楽章制で、16分あまりの小交響曲です。 
トアデンスキョルというのはデンマークの昔の偉人の名前だそうで、ホルメン教会というところに埋葬されているんでしょうね。
しかし舌かみそうなタイトルだな。

冒頭いきなり、華麗な主題が堂々と提示されます。
華やかさ二割増量したシューマン、という感じのゴージャスぶり、とてもカッコイイです。
別の主題による緊張感あるフガートが続き「これ名曲かも!」とワクワクしていると、わずか2分30秒で第1楽章は終わり。
え・・・・? キツネにつままれ感を満喫できます。

 

第2楽章はベートーヴェン風葬送行進曲
深い悲しみに沈む感動的な音楽、中間部の天国的な慰めは感涙モノ。
でも終わり方は不自然なまでに大仰。 冗談なのか真面目なのか。
この楽章はもっとも長く、6分半ほどあります。

 

第3楽章はチャイコフスキー風の優雅なスケルツォ
「くるみ割り人形」に挿入しても違和感なく踊れそうです。

 

そしてフィナーレは、メンデルスゾーン風祝典的ワルツ。 
「真夏の夜の夢」のなかの1曲といわれたら信じてしまいそう。
ひたすら華やかに力強く曲を閉じます。

 

交響曲第8番「アメリンボウの思い出」(1926〜34)も、よく似てます。
4楽章で18分あまり、第3楽章のみテノール独唱と混声合唱が登場します(贅沢な使い方だ)。
アメリンボウは地名で、立派な教会があり、ランゴーは12歳のときそこでオルガニストとしてのデビューを飾ったそうです。 神童だ。

華麗でめでたいファンファーレ風の第1楽章。
冒頭主題の壮麗さ雄大さに、耳を奪われます。
ピアノのオブリガードが効果的。

 

第2楽章は陽気なスケルツォ。
ほとんどメンデルスゾーンに聴こえます。

 

第3楽章、 突然ワーグナー風
テノール独唱と混声合唱が「輝ける街よ、偉大な教会よ、栄光あれ〜」と歌います。
そこまでやらいでもと思うくらい大仰ですが、けっこう感動的。

 

フィナーレは、おおらかで明るい旋律による行進曲。
ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー前奏曲」にちょっと似ています。
晴れやかに円満に曲を閉じます。

 

それにしてもランゴーのメロディ・センスは素晴らしいですね。
メロディ・メイカーとしての才能は、ドヴォルザークに劣らないのでは?


7番、8番とも、 美しい旋律、巧みな管弦楽法、華やかな響きで、聴くものの耳を捉えて離しません。
文句なく、聴いて楽しいのですが、「1920年代にこういう曲書いて、要するになにが言いたいんですか?」と思っちゃうのも事実。
なお、ほとんどの楽章が無形式ソナタ楽章はひとつもありません
ランゴー研究者のB・V・ニルセンは「これはロマン派音楽のように響くが、ロマン派音楽ではない」と評しました。
天才ランゴー、いったい何を考えているのでしょう・・・?

また、ランゴーの交響曲は16曲すべてに表題がつけられています。
なかには意味不明というか、内容に関係なさそうな標題もあり、これまたわけわかりません。

そして、ランゴーの交響曲はさらにひねくれた進化を遂げてゆくのでありますっ!(・・・悪いけどつづく、多分)

(08.7.2.)


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