ランゴー/交響曲第12〜14番
(ダウスゴー指揮 デンマーク国立交響楽団)




Amazon.co.jp : Rued Langgaard: Symphonies 12-14

<前回までのあらすじ>
デンマークの天才作曲家、ルーズ・ランゴー(1893〜1952)は、
17歳で交響曲第1番を完成、さらに矢継ぎ早に大作問題作を発表、前途は洋々と思われましたが、
ちょっとばかり前衛的な作風と、エキセントリックな性格が災いして、デンマークの作曲界から ほとんど無視されます。
音楽の職にもなかなかありつけなかったのですが、47歳でようやくリーベという地方都市のオルガニストに就任。
しかしその地で交響曲第9〜11番を作曲するも、相変わらず楽壇からは無視され続けるのであったとさ。


本HP迷物、ルーズ・ランゴー交響曲シリーズでございます。
今回は、交響曲第12〜14番を収録したディスク。
晩年の「怪作の森」と呼んであげたい作品群です。

この三曲には共通点があります。
それは作曲者の存命中には一度も演奏されなかったこと。
言い換えれば、演奏されるあてもないのに交響曲を書き続けたわけです。
ヒマですね 辛いですね・・・でも書かずにはいられなかったのでしょう。 
愛すべき作曲馬鹿(?)、ルーズ・ランゴーです。

第12番「ヘルシンゲボリ」(1946)
標題は地名のようですが、曲との関連は(例によって)不明。
わずか7分余りの単一楽章の作品です。
様式的には前衛性は影をひそめ、もろ後期ロマン派になってます。
冒頭、吹き荒れる嵐のような激しい主題に圧倒されます。
その後も魅力的な主題が次々に現れ、大作を聴いたかのような印象が残ります。
そもそもランゴーの交響曲は、しょっぱなにインパクトある主題をぶちかまして聴衆の度肝を抜くものの、あとの展開はあまり考えていない
と思われるフシがありまして(でも名曲になってしまう)、この作品など典型かも。
この曲について作曲者は交響曲第1番を要約した」と述べているそうです。
確かに雰囲気はよく似ているものの、第1番と共通する主題は見当たらず、これまた例によって意味不明。。。
とにかく密度の濃い傑作です。

 

第13番「半信半疑」(1947)
27分ほどの曲、単一楽章ですが、CDは7トラックに区切られてます。
冒頭に登場するカッコイイ主題は、なんと交響曲第7番とまったく同じ
たぶんランゴーはこの主題が気に入っていて、もう一度使いたかったんでしょうね。
演奏されるあても無いし、好きなことやってやろーぜ、ってわけでしょうか。
最初の30秒だけ聴くと、第7番第13番かまったくわからないという、イントロクイズ泣かせの曲でございます(←誰もやらないってそんなの)。
様式は中期〜後期ロマン派風、明るく親しみやすい曲調で、途中にはさまれる葬送行進曲のような部分も優雅で品があります。
瞑想的なアダージョや、エレガントなワルツを経て、にぎやかに締めくくられます。
この華やかで堂々とした曲が、なぜ「半信半疑」なのか、これまた例によって意味不明。。。でもとってもきれいな曲です。

 冒頭部分
 (なんか「結婚行進曲」みたいなムード・・・)

第14番「朝」(1951)には「合唱と管弦楽のための組曲」というサブタイトルがついてます。
30分近い大作ですが、流麗で大変聴きやすい傑作です。
続けて演奏される7つの楽章には奇妙な標題がついています。

 1.導入的ファンファーレ:いきなり合唱がフォルテシモで歌う劇的で壮麗なファンファーレ、うわびっくりした! 眼が覚めます! 無駄に華やか。

 (あまりの大仰さについ笑ってしまう・・・)

 2.目立たない朝の星たち:弦によるしっとりとしたマーラー風アダージョ、あまりの美しさにまた寝てしまいますがな。

 

 3.大理石の教会の鐘:華麗なワルツ。オペラ「椿姫」のメロディによく似てます。オルガンも登場して壮大なスケールに。

 (いやこれ絶対「椿姫」のパクリだよね?)

 4.疲れた人々が生活のために起きる:「どこが疲れてんの?」というくらい優雅で明朗。寝起きというより、むしろ「豪華な朝食」(給仕つき)のイメージが?

 

 5.ラジオのカルーソとひねり出す元気:牧歌的な音楽、途中で合唱も登場してワーグナー風(標題を気にするとかえって混乱します)。

 

 6.パパたちが職場に駆けてゆく:なるほど駆け足っぽい短い楽章。でも優雅で、あんまり慌ててる感じはしません。遅刻するぞ。

 

 7.太陽とブナ林:唐突に合唱が「美しきかな人生!」と歌い、うぉーっと盛り上がって力強く全曲を閉じます。

 (無駄に壮麗で、やっぱり笑ってしまう・・・)

豪華絢爛、明朗快活、ラヴリィでロマンティックでビューティフルな音楽ですが、俗っぽい標題と、壮麗な曲調がミスマッチで、なんだか落ち着きません。
深読みする必要はなくて、どーせ演奏のあても無いしと遊び半分で作ったのでしょうか?
これまた例によって意味不明。。。


3曲とも奇妙な曲ですが、音楽自体は後期ロマン派の正統的後継として重厚かつ華麗、無駄に高い完成度に達しております。
マーラー、R・シュトラウスがお好きで、ゲテモノ(?)好みの方は、だまされたと思って聴いてみてください。

さてランゴーの交響曲、残るは2曲です。

(09.1.19.)


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