ルーズ・ランゴー/天空の音楽 ほか
(ロジェストヴェンスキー指揮 デンマーク国立放送交響楽団)



Amazon.co.jp : Langgaard: Music Of The Spheres

Tower@jp : Langgaard: Music of the Spheres, etc / Rozhdestvensky, et al


以前、交響曲第1番「岩の田園詩」がとても良かったデンマークの作曲家ルーズ・ランゴー(1893〜1952)、
代表作のひとつ、「天空の音楽」(天球の音楽、天体の音楽、1916〜18)を聴いてみました。

この曲に関しては逸話があります。
1968年、デンマークの作曲家ペーア・ネアゴー (1932〜) は世界を代表する現代作曲家ジョルジ・リゲティといっしょに作曲コンクールの審査に携わりました。
このときネアゴーは、応募作の中に「天空の音楽」の楽譜を紛れ込ませたのです。
楽譜を見たリゲティ、これが50年も前の作品であることを知ってびっくり、「自分がランゴーの真似をしていたことがわかった」と言ったそうです。

この逸話、「ランゴー」=リゲティ風現代音楽 と思い込ませてしまう恐れがあり、功罪相半ば。
リゲティはネアゴーの手前、「デンマークにはススンだ音楽があるね!」と、ヨイショしただけかもしれません。
確かに早くもトーン・クラスターやミニマル・ミュージック的技法が使われていますし、
ピアノは鍵盤を弾くのではなく弦を直接はじくように指示されているなど手法はめっちゃ前衛的ですが、むしろ静謐でロマンティックな音楽です。

35分ほどの曲は15の短い楽章に分けられていて、詩的な(意味不明ともいえる)タイトルがつけられています。
私などはこのタイトルだけで大盛りごはん3杯はいけますね。 

  1.甘い香りの花で飾られた棺の上の光線のように
  2.日没の青い空で瞬く星のように
  3.光と暗闇のように
  4.波の中で屈折する光線のように
  5.美しい夏の朝の日の中で瞬く露の真珠のように
  6.欲望−絶望−恍惚
  7.世界の魂−奈落−全ての魂の日
  8.私は望む...!
  9.カオス−破滅−遠くと近く
 10.花が枯れる
 11.涙の中の太陽の一瞥
 12.鐘の響き:見よ!彼は来る
 13.花の福音−遠くから
 14.新しい日
 15.終末:反キリスト−キリスト

 1.甘い香りの花で飾られた棺の上の光線のように (弦のトレモロによるトーン・クラスターのきらめき!)
 

 2.日没の青い空で瞬く星のように (平和な日没の風景〜ティンパニ一閃!〜星の瞬き?)
 

 6.欲望−絶望−恍惚 (破滅と裁きの予感?)
 

 11.涙の中の太陽の一瞥 (美しい悪夢のような楽章)
 

オルガン&合唱付きのメイン・オーケストラの他に、ソプラノ独唱付きの離れた別のオーケストラという大編成にもかかわらず、
室内楽的な繊細さを感じさせる、抑制の効いたオーケストレーション。
15の部分のうち、声楽が用いられるのは3部分のみ。 なんちゅうもったいない使い方。
これだけの大編成だったら、大音量でガンガン、合唱もワーワーやりたくなるのが普通ですよね。
やっぱり天才の考えることはようわからんわ・・・。

わからんなりに考えると、メロディとリズムをほぼ封印し、ひたすら「音響」のみを追求した意欲作・問題作といえます。
コンセプトとして時代の30年ほど先を行ってますね。
この曲のトーン・クラスターを聴いていると、ペンデレツキかと思ってしまうほどです。

「キリスト」が出てきますが、宗教的なものはあまり感じられません。
宇宙の調和や、生と死の対比を、ランゴーなりに描いた音楽なのでしょう。
神秘的で幻想的、自然科学系ドキュメンタリー・フィルムのサウンドトラックに使えそうですし、一種のニューエイジ系音楽としても、心地よく聴けそうです。
声楽の登場する楽章は「これ、マーラー? R・シュトラウス?」と思っちゃうこと必至ですが。

 13.花の福音−遠くから (幻想の中を逍遥するようなアリア)
 

初演(1921、カールスルーエ、ドイツ)は成功だったそうですが、ベルリンでの再演(1922)は評判がもうひとつ、以後お蔵入りとなってしまいました。
ベルリンではなく、すでにストラヴィンスキー「春の祭典」(1913)などを聴いていたパリの聴衆の前で演奏されていたら、どう評価されたでしょうか?
三度目に演奏されたのは作曲者の死後、1968年でした。

偶然でしょうけれど終結部はホルスト「惑星」(1914〜17)の終曲「海王星」と、どこか似ています。

(06.8.27.)


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