ランゴー/天球の音楽、終わりの時、深き淵より 
(ダウスゴー指揮 デンマーク国立交響楽団)




Amazon.co.jp : Music of Spheres / The Time of the End

Tower@jp : Langgaard: Music of the Spheres


いやー、びっくりしましたー!

なにがって、デンマークの変人作曲家ルーズ・ランゴー(1893〜1952)の代表作「天球の音楽」(天空の音楽、天体の音楽、1916〜18)の新録音が発売されたのです。

この珍曲、もとい名曲を、聴き比べできる日が来ようとは・・・・・世も末、じゃなかった有難いことです。

以前から出ていたのは、ロジェストヴェンスキーの録音(1997 Chandos)。
今回発売されたのは、最近ランゴーの交響曲全集を完成させた、トマス・ダウスゴー指揮デンマーク国立交響楽団による演奏です。

ダウスゴーによる交響曲全集は、それはもうハイレベルかつ精緻。
ランゴー作品のひねくれたところや、ワケわからんところや、意外に能天気なところを、余すことなく素直(?)に表現した名演ぞろいであります。

そのダウスゴーが指揮する「天球の音楽」・・・・・

いやおうなく期待が高まります!

では、あらためて依頼品を聴いてみよう。

 第1曲 甘い香りの花で飾られた棺の上の光線のように (弦のトレモロによるトーン・クラスター・・・宇宙空間?)
 

 第3曲 光と暗闇のように (繊細なヴァイオリン・ソロと暴力的なティンパニ!)
 

 第6曲 欲望−絶望−恍惚 (神々しさ・・・オルガン・・・クレッシェンドする光・・・)
 

 第13曲 花の福音−遠くから (ソプラノの美しいアリア。マーラー、R・シュトラウスの影響が感じられます)
 

 第15曲 終末:アンチ・キリスト−キリスト (壮大なカオス、そして夢幻の彼方へ。20世紀後半に書かれた現代音楽だと言っても通じそう)
 

 ・・・やっぱ、むちゃくちゃ変な曲です!

メロディとリズムをほぼ放棄して、ひたすら音響・音色を追求した40分もの大作。
トーン・クラスターあり、ミニマル・ミュージックあり、ピアノの内部奏法あり。
100年近く前の曲ですよ・・・。
当時は理解されなかったのも当然。

ストラヴィンスキー「春の祭典」(1913)とほぼ同時期の作品ながらコンセプト的にはストラヴィンスキーに劣らない、いやひょっとするともっと先を行っています。
まさしく天才・・・・・ある意味では。
リゲティの先駆者といわれるのも、むべなるかなです。
これが25歳の作品なんですからねえ・・・。

ダウスゴーの演奏は、ロジェストヴェンスキー盤とくらべると、より繊細でひそやかな印象。
ダイナミックなロジェヴェン、デリケートなダウスゴー、お好みでどうぞです。


併録の「終わりの時」は、オペラ「アンチ・キリスト」の聴きどころをダイジェストした25分ほどの作品。
ちょっととっつきにくいかなあ・・・正直わたしにはよくわかりませんでした。

 前奏曲 アンチ・キリスト
 

「深き淵より」は、ランゴー晩年の作品。
合唱と管弦楽のための曲ですが、導入部分の管弦楽だけで完全にもっていかれます。
いやあー、勇壮だわ、カッコイイわこれは。
いっぽうで何かにせかされるような切迫感・焦燥感も感じられます。
オルガンのコラールを経て、合唱が加わってからの夢幻的で敬虔な響きも圧倒的で、思わずひざまづいて悔い改めたくなるほどです。

 (内容こってり詰まった名曲!!)

このCD聴いて、「ランゴー教」に入信する人が、ちょっぴり増えるかな?

 「天球の音楽」録音風景など
 

(10.10.7.)


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