ランゴー/ピアノ作品集・第3集
(ベーリト・ヨハンセン・タンゲ:ピアノ)
Amazon.co.jp : Langgaard: Piano Works Vol 3
Tower@jp : Langgaard/Piano Works Vol.3
なんということでしょう!
デンマークの偏屈作曲家ルーズ・ランゴー(Rued Langgaard, 1892〜1953)のピアノ作品集・第3集が発売されてしまいましたっ!
第2集もたいがい変な曲ばかりでしたが、第3集はさらに上を行きます。
タイトルからも、「変なやつ」感がプンプンします。
1.夜、盗人のように BVN211a (1930)
2.昆虫館 〜 ピアノのための9つの頭を悩ます絵画 BVN134 (1917)
第1番:ハサミムシ
第2番:トノサマバッタ
第3番:コフキコガネ
第4番:ガガンポ
第5番:シオカラトンボ
第6番:シバンムシ
第7番:イエバエ
第8番:ダンゴムシ
第9番:アカイエカ
3.ピアノのための幻想曲 「影の生活」 BVN307(1914-1915)
4.秋、ランプの光がちらつく中で BVN206(1930-1933)
5.小さなピアノ・ソナタ「ベギン会修道院」(1949)
6.小さなソナタ「母の教会」(1949)
7.生活に疲れたキリストの花嫁(1944)
最初の「夜、盗人のように」
ドラマティックで緊張感たっぷり、なかなかの名曲ですが、タイトルの珍妙さがすべて持って行ってしまいます。
なんといってもいちばん変なの オススメは「昆虫館〜ピアノのための9つの頭を悩ます絵画」。
虫をテーマにした組曲ですが、セレクションが妙です。
イエバエ、ダンゴムシ、アカイエカって・・・。
シバンムシなんて立派な害虫、漢字で書けば「死番虫」・・・・・・サイコーですランゴー!
内容も独創的で、ピアノの枠を叩いたり、弦を直接はじいたりする特殊奏法を駆使(おそらくは元祖)、100年前の曲とは思えません。
しかも前衛ですが難解ではなく、面白くて気持ち悪い。
この「キモカワイイ」感、癖になりそうです(アブナイ)。
「昆虫館」 名演ですが閲覧注意
↓
Part 1
Part 2
しかし同時期に書かれた、ピアノのための幻想曲「影の生活」はがらりと変わり、ラフマニノフばりの夢見るようなロマンティックな音楽。
普通に綺麗な曲です。 なんなんだこの分裂ぶりは。
そして晩年の作であるふたつの「小ピアノ・ソナタ」は、「クレメンティのソナチネかい!」と突っ込みたくなるシンプルさ。
子どもが発表会で弾いてもいいくらいですが、よく聴くと音楽の流れは随所で寸断、
唐突に痙攣するような不協和音が挿入されたり、なんとなく変です。
部分部分は美しいのですが形式は無茶苦茶だし、聴けば聴くほど、どういう音楽かわからなくて不安になってきます。
そして最後の「生活に疲れたキリストの花嫁」、タイトルが秀逸ですが、
内容は静かにまどろむような、デリケートでインティメートな4分ほどの美しい小品。
ランゴーの音楽って、ボーッと聴いているとなんとなく綺麗ですが、表面をはぎ取るとなにか普通でないものが潜んでいます。
心地良く「気分」に働きかけながら、妙な方向に「アタマ」を刺激してきます。
普通のクラシック音楽に飽きた方、ちょっとヘンな音楽に興味がある方にオススメです。
(2017.07.05.)
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