ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲

フランソワ/Debussy, Ravel: Piano Works ラヴェル:ピアノ協奏曲(ロジェ)


みなさまこんにちは。
「のだめカンタービレ」第21巻が発売されました。
パリ編もまもなく大詰めかなあ〜。
人間ドラマが深みを増してきました。
シュトレーゼマンがメフィストで、のだめがファウストになるとは・・・。
すると千秋はマルガレーテ???

そして今回も、ラヴェル「ピアノ協奏曲ト長調」をはじめ、黛敏郎「BUGAKU」(これ名曲!)ベートーヴェン「ピアノ・ソナタ第31番」
ドビュッシー「ピアノのための『映像』」グノー「ファウスト」など、渋い音楽が次々登場します。
ホント選曲がいいなあこのコミックは。

なかでもラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調は、この巻のクライマックス。
千秋孫Rui の演奏場面からは、いまにも音楽が聴こえてくるよう、圧巻です。


Amzon.co.jp : のだめカンタービレ #21


・・・しかし、じつはラヴェルの協奏曲では、

 「左手のためのピアノ協奏曲」

のほうが好きなんですよねぇ私は。(←ひねくれもの)
それどころか、一番好きなラヴェルの作品を選べと言われたら、多分この曲を選んでしまうくらい大好きで、思わずポケットスコアを買ってしまったほどであります。

確かに妙な曲ではあります。
単一楽章で、はっきりした形式もありませんが、いちおうレント〜アレグロ〜レントの3部分に分けられます。

 (←ユジャ・ワンの超絶名演奏!!)

冒頭、地獄の底から聞こえてくるようなコントラバスコントラファゴットのうごめきで主題Tが提示されますが、
「よく聴こえないなあ」とヴォリュームをあげると、ピアノが登場してくるあたりで必ず「うるさいっ!」となりますので要注意。
主題のメロディもよく聞き取れませんが、このあと何度も出てくるので大丈夫。
0:57からホルンに登場する下降音型が、主題Uです。
二つの主題は繰り返されながら音量を増していき、2:25、ピアノが大見得を切るように飛び込んできます、カッコイイ!

ピアノは主題Tに基づくカデンツァを奏でます。左手一本で演奏しているとは思えない重厚さ。ジャズのフレイバーも感じられます。
4:51から管弦楽が力強く主題Tを奏でます。
ピアノは6:15から新しい主題Vを提示、夢見るようなやさしい歌です。この主題は最後のカデンツァで再現します。
7:03から管弦楽が主題Tを繰り返し、ピアノは技巧的なアルべジオでそれに絡みながらじょじょに盛り上がってゆき、8:15からアレグロの部分に入ります。
金管と打楽器の刻む行進曲風のリズムにのってトランペットの鋭い下降音型、これをピアノが反復したあと、
8:42からピアノにアレグロ主題が登場、ジャズっぽい洒落たメロディで、この曲で一番印象的なフレーズです。
ここからの展開のイマジネーションの自由さには、、ただただ翻弄されます。
ラヴェルは自筆譜にmusae mixtatiae(戯れる女神たち)と書き込んでいるそうですが、まさしく言いえて妙かなと。

10:05からピッコロとハープにさえずるようなおどけた主題が登場。
つづいてファゴットの奏でるけだるい主題Uと、ピアノのアレグロ主題が交互に登場、展開しながら盛り上がってゆきます。
12:40にはおどけた主題も再登場、ピアノは細かい音符で装飾し、リズミックな短いカデンツァをグリッサンドで締めます。
13:12からテンポはレントに戻り、管弦楽は主題Tの変形をファンファーレのように吹き上げ、ピアノが32文音符で合いの手を入れます。

14:14からカデンツァ。主題U主題V主題Tの順で登場し、一種の再現部となっていますが、
とにかく片手で弾いてるとは思えないほどの超絶技巧のカッコよさですよ!!
17:30ごろから管弦楽が主題Tで入ってきて、ピアノは主題Uを華麗に変奏、最後にアレグロ部分の鋭い下降音型で曲を閉じます。

叙情性、重厚さ、荘重さ、諧謔、ジャズ、そして東洋趣味、あらゆる音楽の諸相を自由に横断する18分間の魔法
なんというスンバラシイ傑作でしょう。


ディスクは、曲のデモーニッシュな面をしっかり聴かせてくれるフランソワ/クリュイタンス盤が定盤的名演ですが、録音の古さがもどかしい箇所も。

ロジェ/デュトワ盤は録音最高、そして演奏は明るく健全。
もうちょっと陰影が・・・というのは無いものねだりでしょうか?
でもこれもお気に入り。

1976年、45歳で自動車事故のため他界した、ギーゼキングの直弟子ウェルナー・ハースの演奏も、意外にと言っては失礼ですが素晴らしいです。
骨太でたくましい堅実な音楽ですが、叙情性や洒脱さにも不足しません。

ラヴェル自身も愛用した1905年製エラール社のピアノなど、
オリジナル楽器を用いたインマゼール指揮/アニマ・エテルナ盤(ピアノはクレール・シェヴァリエ)もいいですねぇ。
テンポは遅め、典雅で落ち着いた独特の音色を楽しめます。
もちろん録音は最上、そして「亡き王女のためのパヴァーヌ」「ボレロ」など、ラヴェルのベスト的傑作をオリジナル楽器で聴くのもなかなか興味深いのであります。

(08.8.16.)

ウェルナー・ハース/ラヴェル・ピアノ曲全集 インマゼール/アニマ・エテルナ:ラヴェル



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