バッハ/ヴィヴァルディの協奏曲からの編曲集
(ソフィー・イェーツ:チェンバロ)



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ドイツ、1713年。
ヨハン・エルンストという17歳の青年が、オランダ留学を終えてドイツのヴァイマール地方に帰ってきました。
じつは彼はヴァイマール大公の甥であり、音楽を愛する好青年。
当時アムステルダムはヨーロッパの音楽中心地のひとつでした。
なので持ち帰った荷物の中には、ドイツの片田舎では入手できない最新流行音楽の楽譜がどっさり入っていました。

 「なかでもヴィヴァルディというヴェネツィアで人気の作曲家の協奏曲! 斬新なメロディ、躍動するリズムが最高なんだよな!」

と思ったヨハン君、協奏曲を、ひとりで気楽に楽しめたらいいなと考えて、

 「そうだ、伯父様お抱えの音楽家に頼んで、鍵盤楽器に編曲してもらおう!」

楽譜を手渡されたのが当時28歳で、ヨハン・エルンスト公子の音楽の師でもあったヨハン・セバスチャン・バッハ
ヴィヴァルディアルビノーニマルチェッロなどの協奏曲を、チェンバロやオルガンに編曲しながら、

 「おお〜、これがっ、イタリアの最新スタイルですか〜! 来てます! いい刺激来てます〜!」

と、すっかり影響されてしまいました。

その後バッハは影響を生かして「イタリア協奏曲」というチェンバロ独奏曲を書いたり、ヴァイオリン協奏曲チェンバロ協奏曲などを作曲、
最終的に「ブランデンブルク協奏曲」という、超独創的で破天荒な6曲を産み出します。
何気なく聴いてますけど、「ブランデンブルク」はバロックの枠を大きくはみ出した無茶苦茶な作品、
狂気の産物と言っても良い代物だと思うんですけど私は。

このアルバムは、バッハがチェンバロに編曲したヴィヴァルディマルチェッロの協奏曲をたっぷり8曲、76分収めたもの。
バッハの協奏曲創作の原点がここにあります。

じつは同じ企画のCDをすでに持っているので、買うかどうか迷ったのですが、
お気に入りのチェンバリスト、ソフィー・イェーツの演奏だったので、清水の舞台から飛び降りるつもりで(←超大袈裟)買って正解。
いつもながら録音が本当に素晴らしい。
適度な残響を伴った柔かい音ですが、歯切れの良さにも不足せず、聴いて気持ちが良いのです。
ふっくら炊き上がり、一粒一粒がしゃきっと立ってるお米のような・・・・・・いやもう何杯でもおかわりできますよボク。

 Bach/Vivaldi Concerto in D major BWV.972
 

演奏も、テクニックをひけらかすのでなく、控えめな装飾を施しながら優雅で柔軟、あでやかで知的なパフォーマンスを聴かせます。
刺激的なところはありませんが、華やかで明朗、耳に心地よい親しみやすい解釈。
これらの作品に、新たな名盤が加わりました。

 Bach/Vivaldi Concerto in G minor BWV.978
 

さて、ヨハン・エルンスト公子は才気煥発で音楽の才能もあり、自分もイタリアン・スタイルの協奏曲を作曲。
バッハはそれらもチェンバロやオルガン独奏に編曲しています。
この二人は師弟であると同時に気の合う友人でもあったようで、宮廷で2台チェンバロで合奏を行ったりしてます。

しかし残念ながら1715年、ヨハン・エルンスト公子は19歳の若さで病没。
バッハも1717年にケーテンの宮廷楽長に転職、ヴァイマールを去ることになります。
もし、公子が長生していたら、バッハの人生もまた別のものになっていたかもしれません。

(2014.7.16.)

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