バッハ/イギリス組曲
(ソフィー・イエーツ 2021録音)
Tower : Bach/English Suites
とろ〜りとろけるような「イギリス組曲」はこちらになります!
J・S・バッハの「イギリス組曲」は、「フランス組曲」 「パルティータ」と並ぶ「鍵盤三大組曲」のひとつ。
3つのうちでは一番早く作曲されたと考えられていて、優美な「フランス組曲」と比べると、どこか厳格でいかめしいイメージです。
「イギリス組曲」と名付けたのはバッハ自身ではなく、命名者は不明です(フランス組曲も同じ)。
なお余談ですがバッハは死ぬまでドイツから一歩も出たことはありませんでした。
「厳格」というイメージは、私の刷り込み演奏がグスタフ・レオンハルトの1984年盤であるからかもしれません。
大変立派で見事な演奏で、背筋を伸ばし威儀を正して聴かないと罰が当たりそうな気がするほど。
バッハの意図を正しく汲み取った誠実かつ正統な演奏であり、いわば決定的名演奏のお墨付き。
組曲1番 前奏曲 (レオンハルト)
さてこのたび、ソフィー・イエーツが「イギリス組曲」の全曲盤をリリースしました。
美麗で上品な演奏で定評のあるシャンドス・レーベルの看板チェンバリストです。
私この人のファンなので、CDが出たらとりあえず購入することにしていますが、この「イギリス組曲」にはびっくりしましたね。
「なにこれ、遅っ!」
組曲1番 前奏曲
自在で気ままで、夢見るようなフレージング、レオンハルトとは別の曲みたいです。
「かっちり構成された几帳面な曲集」というイメージがガラガラと崩れ落ちます。
花咲く野原でそよ風に吹かれながら演奏しているかのような自由さと伸びやかさ。
いっぽう第2番の前奏曲では、硬質な響きでゆるぎなく構築してゆくレオンハルトに対し、イエーツは春の小川のようにサラサラと流れてゆきます。
ソフトで残響多めの録音もあり、蝶々が舞い、小動物が遊び戯れる光景が思い浮かびます。
組曲第2番 前奏曲(レオンハルト)
組曲第2番 前奏曲(イエーツ) (この曲ではテンポはやや速め)
とっても素敵な演奏で、新たな愛聴盤となりそうです。
なんといってもソフィー・イエーツはイギリス人ですしね!(←関係ないと思う)
組曲第6番でもっともキャッチーなガボットの演奏も好対照。
几帳面で正確無比なレオンハルトに対し、フリルのついたドレスでほほ笑みながら踊るようなイエーツです。
組曲第6番 ガボット(レオンハルト) いやー、几帳面だわあ
組曲第6番 ガボット(イエーツ) キラキラして優美な感じ
どちらも名演奏ですが、ソフィー・イエーツの演奏を聴いていると、とろ〜りとろとろ、心と体がほぐれてくるよう。
まるで温泉につかりながら熱燗飲んでるような気分になるバッハ、たいへん個性的で面白いアプローチだと思います。
(2022.02.25.)
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