J・S・バッハ・パルティータ
(グスタフ・レオンハルト 1986録音)



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偉大なチェンバロ奏者にして古楽演奏のパイオニア、グスタフ・レオンハルト(1928〜2012)が亡くなりました。
享年83歳。

生で聴いたことはありませんでしたが、録音ではずいぶんお世話になりました。
たとえばバッハのロ短調ミサは、レオンハルトの録音が一番好きです。
チェンバロでは、なんと言っても1986年録音のバッハ/パルティータ全曲
レオンハルトには1960年代に録音した旧盤もあり、これは無駄を削ぎ落とした謹厳でまっすぐな演奏。

対するこの新盤では、包み込むようなふくよかな音色に耳を奪われます。
随所でルバートを効かせた濃い表情づけ、自在な表現、遅めのテンポ。
余裕を感じさせる円熟の演奏です。

 パルティータ第1番・プレリュード
 

 なんという優雅さと気品!
 
ただし、この曲にノリの良さとか切れ味の鋭さを求める場合にはおすすめできません。
そういうときは、グールドの演奏 をどうぞ。

初めて聴いたときからずっと、この曲集の私のお気に入りとなっています。
なお、さきほど検索してみたら、いまは随分安く手に入るのですね。
私は初出時に6000円で買ったのですが。
あ、たっぷり聴いてモトはとってるからいいんです、ええ、そんなセコイこと言う私じゃありません。

・・・・・・え、リマスターして音も良くなってる?

 く・・・・・悔しい!!

 パルティータ第2番・カプリッチョ (華麗で壮麗でカッコイイ!)
 

ところでグスタフ・レオンハルトは、アムステルダムの自宅で亡くなったそうですが、
ここは運河ツアーで紹介されるほどの、古くからある大豪邸
彼が生まれ育った屋敷にはバロック期のチェンバロが演奏可能な状態で何台もゴロゴロしていて、
幼少のころから自然にそれらに慣れ親しんでいたそうです(・・・いったいどんな家だ)
屋敷はバロック時代の調度品で埋め尽くされ、まさにバロックな生活を送っていたわけです(バラックではない)。

また、現代的なものが嫌いで、照明にはガス燈やローソクをしばしば使っていたし、
よほどの緊急時以外は電話やFAXは使わなかったということです。
公演の契約交渉などもすべて手書きの手紙で行い、使う楽譜も手書き。
コピー機は大嫌いだったとか。
パソコンなんか見たこともなかったりして。

そういう、便利さよりも優雅さ、効率よりも上品さをとる態度が、演奏にも表れていると思います。

でもなぜかスポーツカーは大好きで、ドイツまで自分で運転して出かけたりしていたそうですよ。

ご冥福をお祈りいたします。

 パルティータ第5番・プレリュード (ゴージャスな音の奔流!)
 

(2012.1.23.)

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