バッハ/パルティータ
(グレン・グールド 1957〜62録音)



Amazon : Glenn Gould Plays Bach: 6 Partitas


J・S・バッハのパルティータ
全6曲すべて名曲、素晴らしいです、個人的にはゴルトベルクより好き。

私にとってこの曲の刷り込みはカール・リヒターがチェンバロで演奏した典雅で優美な録音(1960)でありました。
1970年代、クラシックを聴きはじめたばかりの私、LPを大切に繰り返し味わっては、「はあ〜、沁みるなあ〜」とまったりしておりました。

 パルティータ第5番(カール・リヒター)
 

 

ところがあれは忘れもしない、大学1年か2年か3年頃のいつだったか(←忘れとる)、
巷で評判のグレン・グールドとかいう若造が弾いているパルティータ第5番のLPを知人に貸してもらいました。

 パルティータ第5番・プレリュード(グレン・グールド)
 


 なんじゃあこりゃあ!

なんですかこの無窮動マシンのようなスピーディーな運動性、パチパチはじける音の粒の心地よさ、ハイテンションで突っ走ってるようで隅々まで計算された音運び。
同じ音楽とは思えません、というか全く別次元の音楽です。
リヒターリヒターできちんとした立派な演奏ですが、ベクトルが違うというか、ジャンルが違うというか。
バッハの意図した音楽を忠実に再現しようとするリヒターに対し、バッハという鍵を使って新しい世界への扉を開くグールド
ドキドキするほどスリリングです。
聴きなれたはずのパルティータから、めくるめくファンタジック・ニュー・ワールドへ誘われ、心地良い音のツブツブの中で転げまわったワタシ、
聴き終わるころにはグールド信者の一丁上がりとなりました。

その後、少なくともピアノで弾いたものに関しては、グレン・グールドに太刀打ちできる演奏に出会いません。
例外はアルゲリッチが弾いた「第2番」。 メカニカルな運動性のグールドに対して、熱いパッションと色気を発散するマルタ姐さんすごい。

 

 

 ちなみにグールドの第2番はこれ(前奏曲のみ)
 

それはそうと、バッハのパルティータって、一流ピアニストがあまり録音していない気がします。
リヒテル、ポリーニは正式録音してないし、アルゲリッチは2番だけ。
アシュケナージはそもそもバッハをあんまり弾きませんがなぜか2009年にリリース(未聴)。
アンドラーシュ・シフ、アレクシス・ワイゼンベルク、マレイ・ペライアなどが気を吐いてはいますが、ちょっと寂しい。 

やはり「グールドの呪縛」があるのではないかと。
グールドと比べてあれこれ言われるのは必定ですから、名のあるピアニストほど嫌だと思うんですよね。
う〜ん、これはある意味グールド、罪ですなあ。
バッハのパルティータ、名曲なのに。
まあ、それほど素晴らしい演奏ってことですけど。

なお、チェンバロでの演奏は、レオンハルトの1986年録音が今はお気に入りです。

(2019.9.11.)


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