バッハ/小プレリュードと小フーガ集
(グレン・グールド:ピアノ 1979〜80 録音)



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来月、チェロの発表会に出ることになりました。
2年ぶりです。

曲目は、バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番のプレリュードとジーグに決まりました。

 

 

ひ、弾けるかな〜。
家で練習してるときには「まあまあ弾ける!」と思ってても、
いざ本番で、300人収容のホール狭しとつめかけた30人ほどのお客様の前で弾けるかどうかは別問題。
ステージに出た瞬間、頭の中が真っ白になるあの感覚、癖になります(ダメじゃん)。
とにかく練習するしかないのであります!


さて「ステージで弾く」といえば連想するのが、人前で弾くことを拒否し、録音のみで活動した偉大な変人ピアニスト、グレン・グールド(1932〜1982)。
わずかに残されたライヴ録音も「聴衆がいると調子が出ないなんて嘘でしょ!」と言いたくなるほどの凄さですが、本人は辛かったのですね。
1964年のコンサート・ドロップアウト宣言後に録音されたアルバム群は人類の宝。
もしコンサートを続けていれば、これらを録音することもなく、グールドの精神はすり減っていったかもしれないと思うと怖くなります。

バッハ/小プレリュードと小フーガ集 は、死の2年ほど前に録音されたアルバム。
グールドの作品中では地味な一枚ですが、これ大好きなのです。

 バッハ:小プレリュード BWV.933
 

高度な技巧を要求しない、それこそ子供がピアノの発表会で弾くような曲で、難易度は「インヴェンションとシンフォニア」と同程度。
全音から楽譜も発売されていて、容易に手に入ります → J.S.バッハ小プレリュードと小フーガ 全音ピアノライブラリー

そんな単純な楽譜から、創意工夫に満ちた、はつらつとした演奏を聴かせるグールド。
輪郭のはっきりした、きっぱりとした解釈は洗練の極み。
芯のある明るい音、シャープなリズム、冴えわたる感性で、一瞬も退屈させません。

 バッハ:小プレリュード BWV.935
 

楽譜はシンプルながら、あらゆる角度から徹底的に磨き抜かれ、美しく彫琢されています。
タッチは正確無比、しかし冷たくも無味乾燥でもなく、スリリングで柔軟性すら感じさせるグールド・マジック。
随所でハミングも聴こえてきて、グールド氏ノリノリ。
2年後に亡くなってしまうとは信じられません。

謎めいたジャケット写真も好き。
家具ひとつない空っぽな部屋で一人たたずむグールド。
孤独を愛した芸術家の心の中をとらえたかのような、素晴らしいポートレートです。

(2016.06.09.)


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