バッハ/ヴァイオリン協奏曲集(1971録音)
(ジノ・フランチェスカッティ独奏 ルドルフ・バウムガルトナー指揮 ルツェルン音楽祭合奏団)



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バロック音楽演奏で、古楽器・ピリオド楽器が主流になってはや幾星霜。
テンポは速く、強弱の幅も大きく、リズムはタテノリ、演奏者は床を踏み鳴らすわ、踊るわ、火を吹くわ、楽器を壊すわ(←嘘)、
これはロックですかと言いたくなるような激しい演奏もたくさんあります。

しかし、そんな演奏ばかり聴いていると、若干疲れを感じてしまう今日このごろ。

 「パトラッシュ、疲れたろう。僕も疲れたんだ・・・・なんだかとても眠いんだ・・・・・・・・・・う、うるさくて眠れんわこの演奏!

となってしまうのです。

そんなあなたにお勧めするのが、ジノ・フランチェスカッティ独奏によるバッハのヴァイオリン協奏曲集

ジノ・フランチェスカッティ(1902〜1991)は、艶のある美音で一世を風靡したヴァイオリニスト。
イタリアに生まれ、フランスで修業し、大戦後は主にアメリカで活躍、生前はハイフェッツスターンにも負けない人気を誇りました。
凛とした気品のある音色は優雅にして流麗のきわみ。
深みが足りないとか、精神性に欠けるとか、何弾いても同じとかいう声もあるようですがだまらっしゃい。
ひたすら美しく、聴く者を幸福な気分にしてくれる彼のヴァイオリン、最高じゃありましぇんかマイケルシェンカー。

このバッハのヴァイオリン協奏曲集も、古楽器演奏に慣れた耳で聴くと、まず「遅っ!」と思うはず。
しかしゆったりしたテンポが気持ちよく感じられるまでにそれほど時間はかかりません。

どの曲も、ゆっくりした第2楽章がとくに素晴らしいです。
ノーブルで張りのある音、たっぷりとしたヴィブラート、あふれるうたごころ。
こういうロマンティック・スタイルのバロック演奏は、古楽器ブームによってすたれてしまいましたが、今や一周廻ってかえって新鮮。

 バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番(フランチェスカッティ)
 

バックを固めるのは、ルドルフ・バウムガルトナー指揮のルツェルン音楽祭合奏団
バウムガルトナー/ルツェルンといえば、やはりバッハのブランデンブルク協奏曲の名盤を残しているバロックの大御所。
モダン楽器によるバッハ演奏の最高水準が、ここにあります。

それにしても、バッハの3曲のヴァイオリン協奏曲は凄い名曲。
ヴィヴァルディの協奏曲の直接的な影響を受けて書かれた作品群ですが、決して模倣ではなく、
バッハ独自の強靭な音楽が破格の存在感を持って屹立しています。
「バロック時代のソロ・コンチェルト」の枠組みをはみ出す力強さを持ったスケールの大きな傑作。
やっぱりバッハは偉大だなあ。

(2016.1.30.)


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