昔々の1970年代のこと、竹宮恵子「ロンド・カプリチオーソ」というコミックがありました。
ヨーロッパを舞台にしたフィギュア・スケートの話で、ともに天才的才能を持つ兄弟が主人公。
しかし弟のほうが事故で失明し・・・といったストーリー。
妹が持っていた単行本で読んだのですが、ハイブロウでゴージャスな展開に、小学生の私は大きな衝撃を受けたのでした。
私が当時愛読していた漫画は、「パーマン」「巨人の星」「タイガーマスク」「おそ松くん」。
それらにくらべると「ロンド・カプリチオーソ」の世界は100倍大人っぽく映りました。
「こういう漫画もあるんだな〜」と、子供なりに感じ入ったものです。
その最初のほうに、
「序奏とロンド・カプリチオーソ ジノ・フランチェスカッティの演奏 バイオリンのきらめくしらべ
ニコルよ・・・・・・ きみはこの曲が好きだった・・・・・・」
というフレーズが出てきます。
「パーマン」や「おそ松くん」にはぜったい出てきませんから、こんな台詞!
このフレーズがなんとなく印象に残っていて、その後クラシック音楽を聴きはじめるとまもなく、
ジノ・フランチェスカッティ(1902〜1991)の弾く「序奏とロンド・カプリチオーソ」のレコードを手に入れました。
「なんて綺麗な曲じゃー!」
ミステリアスでメランコリックな序奏部、ツンと澄ましながらも一抹の哀愁をたたえたロンド主題の美しさ。
終わり近く、ヴァイオリンのアルペジオに乗って、管弦楽がロンド主題を奏でるところはもう綺麗過ぎ!
サブイボが出まくりました。
文字通りレコードが擦り切れるまで聴いたものです。
というわけで、強力な刷り込みがなされ、この曲に関しては私はフランチェスカッティでないと満足できない身体にされてしまったのです。
技術的なことを言うならば、たとえば諏訪内晶子さんのCDのほうが上かも。
正確無比にして精密緻密、すべて楽譜の指示通り、一音たりともおろそかにしません。
これはこれで本当に素晴らしいのですが、でもやっぱりフランチェスカッティの色気、香気・・・・ああ、たまりませ〜ん。
このCDにはほかに、ショーソン「詩曲」、ラヴェル「ツィガーヌ」が収録されています。
とくに「ツィガーヌ」が絶品。
フランチェスカッティはラヴェル自身のピアノ伴奏でこの曲を弾いたことがあるそうで、
いわば作曲者直伝の演奏なのです。
遊びと余裕にあふれた粋な弾き崩しぶりは、ほかの演奏の追随を許さないところ。
大変素晴らしいCDなのですが、欠点はお値段。
3曲入り、34分のCDで、いまどきこの値段は、そりゃないぜ不二子ちゃん〜であります。
SONYさん、曲目増やして値下げして再発してくれませんかねえ。
というか、フランチェスカッティのボックス・セット出す気ありませんか〜!?
ぜったい買いますから!!
(10.7.24.)
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