エリック・シブリン/「無伴奏チェロ組曲」を求めて ─ バッハ、カザルス、そして現代
(武藤剛史・訳 白水社 2011年)



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新聞でポピュラー音楽の評論を務める著者が、気まぐれで行ったクラシック音楽のリサイタル。
彼は初めて耳にするバッハ『無伴奏チェロ組曲』の、地味ながら豊かな音楽に魅せられる。
一台の楽器が四本の弦だけで奏でる音楽の何がこれほど人を惹きつけるのか?
この曲はどういう背景から生まれ、どのような道をたどって、われわれのもとへやってきたのか?
本書は『チェロ組曲』の構成を模して、「第一組曲」から「第六組曲」までの六章がそれぞれ「プレリュード」「サラバンド」などと題された六つのパートに区切られる。
それぞれの「組曲」で著者は作曲者J・S・バッハと、曲の再発見者パブロ・カザルスの生涯を語り、
ミッシャ・マイスキーやピーター・ウィスペルウェイらのインタビューもまじえて、作品のなりたちや受容について考察する。


バッハ「無伴奏チェロ組曲」、どうにか第3番まで弾けるようになりましたっ!
つっかえつっかえ、フニャフニャな音程で、あちこち間違えながらではありますが・・・・(←そういうのは「弾ける」とは言わない)。

でもいいのです、「弾けたぁ」と自己満足しているのです、そっとしておいてください。
練習を終えてリビングに戻ると、

 「あー、うるさかったー! 全然上手にならないね!」

と家族に言われて現実に引き戻されます。
道はまだ遠い・・・。

それでも先生は、「後半のレッスンに入りましょう」と言ってくれました。
しかし・・・第4番以降は、さらに難しいのだそうです!

 先生「第4番はかなり弾きにくいので後回しにしてと・・・。でも第5番も地味だし通常調弦だと結構難しいですねえ」

本来第5番はA弦を1音下げてGで弾くように指定されているのですが、多くのチェリストは面倒くさいので(←違う)無理やり通常調弦で弾きます。

 私「じゃあ、第6番はどうですか?」

 先生「第6番が一番難しいですねえ

 私「どれも弾けんやないですかー!」

・・・弾く曲がないのは困るので、とりあえず第5番の「アルマンド」を練習することになりました(「プレリュード」は難しいので後に回すそうです)。


   You Tube/バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番「アルマンド」


・・・地味で暗い・・・。
しかし、一生懸命練習するのみであります!


ところで、数ヶ月前に買って、少しずつ読んでいた本を、最近やっと読み終えました。

 エリック・シブリン「無伴奏チェロ組曲」を求めて ─ バッハ、カザルス、そして現代

ポピュラー系の音楽ジャーナリストで、趣味でギターは弾くものの、バッハにもチェロにも全く興味のなかった著者が、
たまたま暇だったので聴きに行ったリサイタルで、バッハ「無伴奏チェロ組曲」に魅せられ、
この曲とバッハについて興味を掻き立てられ、あげくにこんな分厚い本を書いてしまっていたという恐ろしい話です。

何が恐ろしいって、この人のハマりやすさです。
「無伴奏チェロ組曲」で良かったですねえ、ギャンブルや骨董収集にハマらなくて(←余計なお世話)。

マニアックな本ですが、「無伴奏チェロ組曲」に興味がある人なら必読。
「作品について」「バッハの生涯」「カザルスの生涯」の3つのパートが代わる代わる語られます。
著者エリック・シブリンは実に筆達者で、とくに「バッハの生涯」のパートは、これまで読んだバッハの評伝の中でも最高の面白さ。
最新の研究成果も交え、妻を愛し、子供を愛し、音楽を愛し、名誉とお金にはあまり恵まれなかった、血の通った人間バッハを身近に感じさせてくれます。

パブロ・カザルスについても、一本気で正義漢で女好きだったスペイン生まれのチェロの巨人の生涯を、生き生きと描きます。

彼らの伝記は、一章ずつ代わる代わる登場し、まるでふたりが同世代を生きた友人であるかのような錯覚に陥ります。
それもまた著者の意図なのでしょう。
心憎いばかりに巧みな構成です。

作品探求の章では、エリック・シブリン行動力全開、プロのチェリストにインタビューしたり、
自分もチェロを習い始めたり(でも結構すぐ挫折する)、ギターで1番のプレリュードを弾いてみたり、
カザルスが最初に手に入れたのと同じ古い版の楽譜を探し出したりしながら、
この偉大な作品について、あーでもないこーでもないと語ります。
そのうちに、そもそもこの作品は本当にチェロのために書かれたのかとか、
失われたバッハの自筆楽譜はどこへ行ったのかなどの謎も浮かび上がってきて、ヨーロッパを股にかけた探求の旅に出たりもします。

ここまでする人、なかなかいませんよ・・・。

そもそも門外漢だっただけに、口調は平易で、上から目線でないのもGOOD。
全編から感じられるのは、この名曲に対する「愛」。
そう、「無伴奏チェロ組曲」への愛をひしひしと感じる名著でした。

(2013.10.23.)


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