バッハ/無伴奏チェロ組曲
(ロストロポーヴィチ独奏 1991年録音)




Amazon.co.jp : J.S.Bach : Cello-Suiten/Rostropovich

Tower@jp : Bach Cello Suites/Rostropovich

HMV : Bach Cello Suite/Rostropovich


我が家のエコだけどバカな長女(大学生)のことは、この記事でもちょっとお話しいたしました。
その長女が冬休みの寄生 帰省を終えて、関西の下宿に戻ってゆきました。
その晩電話がありました。

 「私なぁ、ちょっとでも節電しようと思って、テレビとDVDレコーダーと暖房便座のコンセントを抜いてから帰省したわけよ」

 「ふんふん」

 「それで今日下宿に戻ったらねえ・・・」

 「うん」

 「エアコンがつきっ放しでしたー! ははははは!!」

 「この馬鹿娘ー!!!」

やれやれ、十日間帰省していた間の電気代、いくらになったことやら・・・。
まあ、馬鹿な子ほどかわいいものです。


さて、20世紀後半最高最大のチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ大権現閣下(1927〜2007)。
この人のバッハ「無伴奏チェロ組曲」は、若い頃のライヴ録音を取り上げたことがあります。
筋骨逞しい兄ちゃんがチェロを背負って仁王立ちしているような豪快な演奏でした。

じつはロストロポーヴィチはこの曲の正式な録音をなかなか行いませんでした。
彼は弟子のミッシャ・マイスキーにこう言ったそうです。

 「レコードはいつでも録音できる。若い頃に無伴奏のレコードを出すと、当初は誇りになるだろうが、以後君はそのレコードによって判断される。
 若い頃の未熟な演奏でランクづけされると、そこから立ち直るのは、とてもじゃないが難しい事になるよ」

けだし至言というべきでしょう。
まあ、そんなことお構いなく生涯に4回だか5回だか録音したヤーノシュ・シュタルケルという巨匠もいますけれど。
とにかく1991年・ロストロポーヴィチ65歳の時に満を持して録音されたのがこのCD。
きわめて個性的な無伴奏を聴かせてくれます。
第1番は速いテンポで軽やかに始まります。
快速で軽快な演奏だなあと思って聴いていたらさにあらず、遅い曲は極めて遅く、テンポの振り幅が非常に大きいです。
第6番のアルマンドが10分30秒なんて、気絶するほどの遅さです。

音も、ぶっとい音でブンブン鳴らすところもありますが、消え入りそうな音でひそやかに弾いてるところも多く、音量の振り幅も大。
そして全体から受ける印象はむしろ静謐で内省的。
様々な表現を駆使しながらバッハとの親密な対話をひとり楽しむかのようです。
(ささやくように奏でられる第4番のブーレ!)
個性的な演奏なら、マイスキーの1999年盤もかなりの代物ですが、マイスキーがけっこう聴衆を意識した演奏なのに対し、ロストロポーヴィチは、

 「人がなんと思おうとわしゃ気にせんもんね。わかるやつだけわかれば良いのさ」

とうそぶいてるみたいに聴こえます。
つまりひとりよがり&自分勝手とも言えますが、それを言っちゃあいけません(←言うとるがな)。
なにしろ巨匠中の巨匠、思わずはっとさせられる箇所があそこにもここにもあって、耳を離せません。
とくに各組曲のサラバンドでの祈りと瞑想の深さといったら、聴いてるだけで悟りが開けそうです。
やはりそこいらの若造には真似できない演奏、年を重ねた巨匠だけがたどりつける滋味に満ちた境地なのでしょう。

ただ、はじめてこの曲を聴こうという方には、
ピエール・フルニエの旧盤とか、モーリス・ジャンドロンの録音をオススメしたいですねえ。

(2015.01.08.)


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