サン=サーンス/ピアノ四重奏曲全集
(Quartetto Avos)




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「最も過小評価されている大作曲家」の筆頭だと思うのが、カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921)。
ブラームスやドヴォルザークに引けを取らない天才にもかかわらず、なぜか軽く見られがち。

マザコンで皮肉屋で口が悪かったせいでしょうか?
アルフレッド・コルトーに向かって、
「ほお〜、君程度の腕でピアニストになれるわけ?(笑)」 と言ったとか
 (ちなみにサン=サーンスはピアノの達人でピアノ協奏曲は自分で初演しました)。

あと愛弟子のフォーレを「可愛いデブ猫」と呼んだりしたそうです。
 (なおフォーレは生涯にわたってサン=サーンスを敬愛しました)

「ピアノ四重奏曲 ホ長調」は、3楽章からなる20分ほどの曲。
まだ学生だった18歳の時に作曲、課題としてパリ音楽院に提出されました。
その後、楽譜はフランス国立図書館に所蔵され(というか死蔵され)、1992年にようやく出版されました(作曲後約140年!)。
サン=サーンス自身は、この曲を作ったことを忘れていたらしいです。
これほどの曲を忘れちゃうとは・・・さすが天才。

第1楽章冒頭チェロで歌われる序奏主題の流麗さ、名曲の予感がプンプンします。
続くアレグロの主部(1:05〜)も晴れやかで若々しく、春の陽光のような輝きに満ちた素晴らしい楽章です。

 第1楽章
 

第2楽章アンダンテは、草原で昼寝でもしているようなやすらぎの音楽。

 

第3楽章アレグロ・コン・フォコは、ユニゾンの力強いテーマで始まります。
手堅く書かれたソナタ形式のフィナーレ。
どことなくドイツ的というかベートヴェン風なのは、音楽院の課題として書かれたためでしょうか。
でも豊饒な活力に満ちていて、思わず「元気があってよろしいっ!」と言いたくなります(←何様?)。

 

それにしても18歳ですよ・・・。
サン=サーンスの才能に開いた耳がふさがりません。
ベルリオーズ(1803-1869)は若きサン=サーンスを評して、「彼は万能だが、未熟さに欠ける」と言ったそうです。

そういえば天敵(?)ドビュッシーの「ピアノ三重奏曲」も、18歳の時に書きながら楽譜が紛失、1982年に発見され86年に出版されるという似たような経緯を辿っています。
このふたり、実はけっこう気が合ってたりして。

「ピアノ四重奏曲 変ロ長調 作品41」は、円熟期の傑作。
私、この曲の第2楽章が大好きなんですよ。
チョーカッコよくないですか、この楽章?

 第2楽章 アンダンテ・マエストーソ・マ・コン・モート
 

いやあ〜、しびれるわあ〜!
ホントにサン=サーンスは天才ですねえ。
この楽章、決まった形式のない自由な音楽であるのもポイント高いです。
サン=サーンスはよく「頑迷で保守的な頭の固い老害オヤジ」みたいに言われますが(←いやそこまでは言っとらんやろ)、
じつはわりかし大胆なこともやっていて、若い頃は「革命家」とか「不快な現代作曲家」とか言われてるんですよね。

他の楽章もキリリと引き締まった素晴らしい音楽。
最後の第4楽章はキャッチーな主題で華やかに始まり、一瞬で心をつかまれます。
「白鳥」や「序奏とロンド・カプリチオーソ」を聴けば明らかなように、サン=サーンスのメロディ・センスは超一級です。
先行楽章の主題も引用して緊密に構成されています。
いやあ〜サン=サーンスってやっぱりいいですねえ。

 第4楽章
 

(2025.03.15.)


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