サン=サーンスのピアノ協奏曲


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カミーユ・サン=サーンス(1835〜1921) って、「人気がない」というわけではないのですが、ちょっと軽く見られている気がします。
「序奏とロンド・カプリチオーソ」 「交響曲第3番『オルガン付き』」 「ヴァイオリン協奏曲第3番」など、
演奏会でも録音でも良く取り上げられる人気曲ではありますが、
「表面的」「深みがない」と、特にドイツ系音楽のお好きな人には、評判悪いようです。
もちろんサン=サーンスの魅力をちゃんと判ってる人もたくさんおられるわけで、たとえば音楽評論家の渡辺和彦さんは、このように書かれています。

 「サン=サーンスなどの作品の面白さを本当に味わうことができる人こそ、音楽分野の文明人。
 彼らの作品を 『華麗だが内容に乏しい』 と軽蔑し、その対抗馬にベートーヴェンのコンチェルトやカルテットを持ち出す人は野暮天だ。
 ごはんと味噌汁があれば、ケーキも紅茶もいらないという無粋者に、サン=サーンスの音楽の贅沢で粋な味わいが分かるはずもない」

   (渡辺和彦「ヴァイオリン/チェロの名曲名演奏」 音楽之友社、1994年、142ページ)

そのサン=サーンス、10歳でモーツァルトのピアノ協奏曲を弾いてピアニストとしてデビュー。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタを完全に暗譜していて、聴衆の求めに応じてどの曲のどの楽章でも弾いたとか、
ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」を暗譜で指揮したとか、とにかく大変な記憶力の持ち主だったようです。
さらに天文学、考古学、文学にも造詣が深く、みずから詩作もしたというから、よほど頭のよい人だったのでしょう。
彼は洗練された完成度の高いものを愛し、伝統を守ることを好み、奇をてらうことは嫌いだったということで、その態度は作品にもよく現れています。

そうしたところは、後輩のドビュッシーから批判もされたわけですが、
彼はエキセントリックな革命家・芸術家タイプ、サン=サーンスはアカデミックな職人タイプですから、まあ、話が合わなかったんでしょうねえ。

お気に入りでよく聴くのが、5曲のピアノ協奏曲
保守的な作曲家と言われるサン=サーンスですが、ここではいろいろ新しいことに挑戦しているし、
5曲それぞれに個性的で、とても素晴らしい協奏曲群だと思います。
全部まとめてCD2枚、という収まりの良さもうれしいです。

第1番ニ長調は23歳の若き日の作品で、「元気があってなかなかよろしいっ!」 といいたくなる感じ。
溌剌とした明るい曲で、聴いてて楽しいです。

第2番ト短調は、独創的な名作、一番人気があるのもこの曲かな(それでもあんまり有名とは言えない)。 
長大な第1楽章アンダンテ・ソステヌートはロマンティック&ラプソディックで、濃厚な味付け。
第2楽章はアレグロ・スケルツァンド、第3楽章プレストと、「序・破・急」構成になっていて(ピアノ協奏曲では珍しい!)、メロディの美しさとピアノパートの華麗さは見事。 
(非常に弾きやすく書かれていて、音で聴くほどテクニック的には難しくないと、 あるピアニストが言っているのを聞いたことがあります。
 少ない労力で高い効果を得る。 ピアノを知り尽くした作曲家の技でしょうか)

 サン=サーンス/ピアノ協奏曲第2番(名演!!)
        ↓
 

第3番変ホ長調は、ちょっと地味な印象の曲。
通常の3楽章構成で、手堅く作られていて、悪い曲ではないのですが・・・。

第4番ハ短調は2楽章構成。 さらに各楽章がそれぞれふたつの部分からなるという、「交響曲第3番」と同じ構造の作品。
最初の部分で提示された主題が、その後も形を変えながら何度も登場する、「循環形式」で書かれています。
協奏曲的な華麗さに加え、交響曲のような構成美をも感じさせる名作傑作異色作。
聴けば聴くほどに味わいが出る曲です。 

 サン=サーンス/ピアノ協奏曲第4番(名演!!)
        ↓
 

最後の第5番ヘ長調には「エジプト風」のタイトルがついています。
61歳の巨匠の手になる、鍵盤上の自在な遊び。
ユルいようでいてどこにも隙がない、達人の至芸ここにあり。
サン=サーンスはエジプトを何度も訪れ、とても気に入っていたそうです。
全体にリラックスした感じの音楽で、特にタイトルの由来となった第2楽章は「ナイル川の夜」とでも呼びたいような、エキゾチックな雰囲気のラプソディー風音楽。
第3楽章は技巧的でにぎやかなトッカータ。 「カーニバルの喧騒」といった雰囲気。 
最後を明るく締めくくってくれます。

 サン=サーンス/ピアノ協奏曲第5番「エジプト風」(名演!!)
        ↓
 


「やんちゃな若者」第1番、「ロマンティックな淑女」第2番、「内気な田舎の青年」第3番、「筋骨隆々がっしりマン」第4番、「飄々とした自由人」第5番と、
各曲の性格がはっきりしてます。 「キャラが立ってる」と言うんですか (え、言わない・・・?)。

CDですが、ロジェ独奏/デュトワ指揮、 チッコリーニ独奏/ボド指揮の2組の全集を愛聴しています。
美しい音で洗練された音楽を聴かせてくれる、ロジェ盤が一番のおすすめです。
チッコリーニ盤は独奏も伴奏もやや荒い気がしますが(録音のせいか?)、ロジェ以上にダイナミックな表現を聴かせてくれるところもあり、楽しめます。
あと日本を代表するピアニストの一人、小川典子が、第1番と第2番を録音しています(BIS)。
これも素晴らしい演奏です。 続きはいつ出るのでしょうか?

(02.7.5.記)


P.S. サン=サーンスのピアノ協奏曲に関しては、ジャンヌ・マリー・ダルレ盤田中希代子盤(第4&5番のみ)の記事もあります。(2015.11.22.追記)



(2010年追記)
これも端正な名演です



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