ヴァレンティナ・リシッツァ・プレイズ・フィリップ・グラス(2枚組)
Valentina Lisitsa Plays Philip Glass
(2014)



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今年の梅雨はじつに梅雨らしい梅雨で、このところ連日雨です。

雨は弦楽器の大敵でありまして、湿度が高いとチューニングは狂うし、楽器は鳴らなくなるしで大変。
しかし、私くらいになると全然平気です。
もともと音程ヘナヘナなので、チューニングが狂っても変わらないし、
楽器は年中鳴ってませんからー! こもって濁った音、普通ですからー!

 どんなもんだい!(泣)

楽器のために24時間エアコンつけっぱなしという話も聞きますが、それってエコじゃないし、電気代が・・・・・・。
でもこれから暑い夏がやってくるしなあ。
弦楽器の部品はニカワで接着されていて、高温になると溶けてきます。
数年前には夏の暑さと湿度のおかげで、あわや楽器分解の危機も経験してますので、何とかしなくちゃとは思うのですが。


ところで、梅雨時に合う音楽といえば思い浮かぶのがミニマル・ミュ−ジックの巨匠フィリップ・グラス
この人の音楽はしっとりして翳りがあり、聴いているとお肌が潤ってくる気がします。
同じミニマル・ミュージックでもスティーヴ・ライヒの音楽が、乾いた幾何学的な美を感じさせてくれるのと対照的。

以前、やはり梅雨時にグラスのヴァイオリン協奏曲を記事にしたことがありますが、今回はヴァレンティナ・リシッツァによるピアノ作品集を。

「金髪爆演魔女」の名をほしいままにしているヴァレンティナ・リシッツァ
ラフマニノフリストをガンガン弾きまくる一方で、マイケル・ナイマンのピアノ曲を集めたアルバムを出すなど、
ミニマル・ミュージックとの相性も良く、このフィリップ・グラス作品集は2枚組という力の入れよう。

 

一聴、「おっ」と思うのが、溢れんばかりの「うたごごろ」、そしてやわらかなリリシズム。
これほどまでにロマンティックな演奏だとは!
ミニマル・ミュージックは感情を排した無機質な音楽、という先入観を気持ちよく覆してくれます。

そしてまろやかにして澄んだ「響き」の耳当たりのよさ。
たっぷりと情緒を湛えたピアノの音が、しっとりとした息づかいでやさしく流れてゆく悦楽。
しかしその音の向こうに漂うは、どこか虚ろで妖しい気配。
ミニマル・ミュージックで甘く危険な色気を感じさせてくれるリシッツァの鋭敏な表現力に酔うであります!

このアルバムを控えめな音量でかけながら、庭に降る雨をぼーっと眺めていると、世の中のほとんどのことはどうでもよくなってきます。
チェロも壊れたらまた修理に出せばいいわけだし〜(←オイオイ)。
個人的には名曲「Metamorphosis」が収められた2枚目のほうが気に入っていますが、
まあどちらも似たようなものです。

 Metamorphosis Two
 

(2015.7.8.)

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