グラス/ヴァイオリン協奏曲 ほか
(アデーレ・アンソニー:独奏 湯浅卓雄:指揮)
(NAXOS 8.554568)
梅雨ですねえ。
最近、あるブログで、梅雨にふさわしいクラシック音楽は?という話題がありました。
梅雨にふさわしい音楽・・・フィリップ・グラス(1937〜)のヴァイオリン協奏曲はいかがでしょうか。
それほど「クラシック」ではないですが、ご容赦(1987年作曲)。
グラスはミニマル・ミュージックの大御所作曲家。
ミニマル・ミュージックは、短い音素材の反復を基本とする音楽。
同じ音型を繰り返しながら、ちょっとづつ変化をつけていくのが基本パターンです。
なんだか簡単に作れそうですが、聴き手を退屈させないようにするのは大変でしょう。
ただ、ミニマル・ミュージックでも、グラスの作品は叙情的で湿り気をおびているので、
しとしと雨の降る日に聴いても、けっこうサマになるような気がするのです。
第1楽章
オーケストラが短調の和音を波のように刻む上に、独奏ヴァイオリンが分散和音で入ってくる印象的な冒頭部分、
バロック的でありながら同時に現代的です。
しつこくしつこくしつこくしつこくしつこくしつこく繰り返されるせわしない分散和音と、
息の長いリリカルなメロディが交代しつつ、クライマックスに向かって盛り上がってゆき、最後は静かに楽章を閉じます。
音の流れに心地よく身をゆだねているうち、徐々に浮遊感を感じて眠くなってきます。
第2楽章
古典的な下降音型(ラ-ソ-ファ-ミ)の繰り返しの上に構築される、感傷的なパッサカリア楽章。
ビーバーの「無伴奏ヴァイオリンのためのパッサカリア」と同じ構造です。
なるほど短い音型を繰り返すという意味では、パッサカリアこそミニマル・ミュージックの元祖かも・・・
などとぼんやり考えているうちに眠くなってきます。
第3楽章
独奏ヴァイオリンが忙しい分散和音を、これでもかこれでもかこれでもかこれでもかこれでもかこれでもかと繰り返し、
オーケストラが合いの手を入れるという単純な構造なのに聴かせます。
後半、第1楽章を回想しながら静かになってゆき、消えるように曲を閉じるころにはもう眠くてたまりません。
「現代音楽」ではありますが、むしろムード・ミュージックに近いです。
知的で綺麗で御洒落で、メランコリックな音楽であります(全曲一貫して短調)。
23分程度と、長すぎないのも良いですね。
集中して聴き入ることを要求しない音楽である点も、梅雨向けです。
バックに雨音が聞こえていてもあまり気にならないのです。
(05.6.17.記)
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