ビーバー/ロザリオのソナタ
(グナール・レツボール:ヴァイオリン 1996録音)




Tower : ロザリオのソナタ

Amazon : Sonaten Uber Die Mysterien

ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644〜1704)という、長たらしい名前の作曲家がいます。
ドイツの人で、時期的には前期バロック時代にあたります。
あの有名なバッハとかヘンデルは、後期バロック時代の人です。

前期バロックというと、なにか形式も未成熟で、地味で面白くない音楽というイメージを持っていたのですが、
あれは忘れもしない数年前のいつだったか(←忘れとる)、そんな先入観がこの曲を聴いて吹っ飛びました。

この「ロザリオのソナタ」は形としてはヴァイオリン・ソナタです。
ソナタといってもこの頃はまだソナタ形式はありません、ヴァイオリンと通奏低音のための自由なファンタジーという雰囲気です。

全曲には「キリストの秘蹟に基づく15のソナタと、パッサカリア」という
変な壺でも売りつけられるんじゃないかと思う副題がついていますが、聴いてみれば別に宗教的な雰囲気などありません。
激しくて濃くて熱くて、変幻し明滅し輝く、妖しくも美麗なる音の響きがあるのみです(まあ、ある意味充分アブナイんですけど)。

「ロザリオのソナタ」第10番「架刑」


激しいリズム、ほとばしるパッション、暴走するエモーション。
ビーバーはヴァイオリンの名手でしたが、もし現代に生まれたら超絶技巧ロック・ギタリストになったんじゃないかなあ。

6〜7分のソナタが15曲続き、最後は無伴奏ヴァイオリンによるパッサカリアです。
「守護天使」というタイトルがついています。
4つの音による単純な下降音形の主題(絶対音感がない私にはラ・ソ・ファ・ミと聴こえる)を56回繰り返す上に構築される音の大建築。
バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌの先駆といわれる名作です。

「ロザリオのソナタ」終曲「パッサカリア(守護天使)」



お気に入りのディスクは、うっかり触ると火傷するぜってほどに激しくも熱いパフォーマンスのグナール・レツボール盤(ARCANA)
没入型というのでしょうか、呪術的というのでしょうか、ちょっと「イっちゃって」るんじゃないかと思うくらいの、ヤバイ演奏。
異様なテンションの高さ、パッションと狂気がほとばしってます。

「ロザリオのソナタ」第1番「受胎告知」


「ロザリオのソナタ」終曲「パッサカリア(守護天使)」


(01.11.10記)


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