ビーバー/ロザリオのソナタ
(スザーネ・ラウテンバッハー:ヴァイオリン 1961録音)
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ドイツ・バロックの作曲家ハインリヒ・イグナツ・フランツ・フォン・ビーバー(1644〜1704)。
その代表作「ロザリオのソナタ」が、私大好きでして、CDも10種類くらい持っています。
どの演奏もそれぞれに個性があって面白く、本当にフトコロの深い名曲だなあと、聴くたびに感じ入ります。
スザーネ・ラウテンバッハー(1932〜)盤は1961年の録音で、おそらくこの曲の最初の全曲録音。
「古楽」とか「オリジナル楽器」という概念もあまりなかった時期で、当然モダン楽器使用。
しかし、これが素晴らしいのです!
冒頭からただならぬ表現力のこもった演奏です。
素朴といえば素朴で、見栄もケレンもありませんが、いきなり心をつかまれてしまいます。
ソナタ 第1曲「大天使ガブリエルによる御身籠りのお告げ」
タメをたっぷり効かせた芳醇な歌いくち。
内面的な抒情の気配を感じさせつつ、音楽は直球勝負。
思わせぶりや小細工は抜きに、切れ味の良い演奏を展開します。
メロディはストレートに流れ、風を得た帆のように鮮やかに前進し、ミューズはさわやかに微笑みます。
もちろん「天衣無縫」ではなく、はっきりと狙いを持って仕掛けているはず。
それはおそらく宗教性や神秘性を排した、純粋音楽としてのこの曲の姿を明らかにすることであり、あざやかに成功しています。
伴奏はヴィオラ・ダ・ガンバと鍵盤楽器(ハープシコードとポジティヴ・オルガンの使い分け)の二人体制。
出過ぎず引き過ぎず、見事なインタープレイ、緊密な三重奏を繰り広げます。
じっさい「ロザリオのソナタ」を最初に聴くなら、この演奏が一番良いんじゃないかと思うくらいで、
何も足さない何も引かない、曲の本質をとらえて余すところがない解釈、見事です、参りました。
まあ、他の演奏も異様にテンション高かったり、テンポの出入りが激しかったり、伴奏者が5人もいたりして、
それぞれに面白かったり変だったり笑えたりと、愉しいのですが(なんといっても曲がいいからね)。
とにかく、このラウテンバッハー盤はスタンダード、またはコントロール、または基準としていつまでも価値ある名盤と申し上げたいです。
ソナタ 第12曲「キリストの昇天」
スザーネ・ラウテンバッハー(1932〜)は、それほど有名とは言えませんが、
VOX BOXレーベルなどの古いCDを漁っているとよく目にする名前です。
バロックから現代まで、幅広いレパートリーを持つドイツの実力派ヴァイオリニストです。
(2018.07.21.)
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