ビーバー/ロザリオのソナタ
(リナ・トゥール・ボネ、ムジカ・アルケミカ 2015録音)



Tower : Biber / Mystery Sonatas

Amazon : 『ロザリオのソナタ』 リナ・トゥール・ボネ、ムジカ・アルケミカ

情熱的で妖艶なロザリオのソナタ


スペイン出身のバロック・ヴァイオリニスト、リナ・トゥール・ボネによるビーバーロザリオのソナタ
情熱的で妖艶、引き込まれます。

バックを支えるムジカ・アルケミカはオルガン(クラビオルガヌム)、ハープシコード、ハープ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、テオルボという充実の五人編成。
第1番からオルガンとハープシコードを一緒に鳴らすという大胆さ、しかもハープシコードはけっこうアドリブ効かせてます。
それらを従え奔放かつ幻想的に飛翔するリナ・トゥール・ボネのヴァイオリン。
自由な装飾も加え、通奏低音とともに繰り広げる当意即妙のインタープレイはまるでジャズのよう。
いやー、これは素敵です。

 第1番 受胎告知
 (2:35からオルガンとチェンバロの二重奏、さらにハープも加わります。ゴージャス!)

他の曲も同様で、歌うように踊るように奏でられるリナのヴァイオリンはパッション成分多め。
思い切り情を乗せ、音楽をおのれに引き寄せてグイグイ高まってゆきます。
凛とした美音と、前のめりに疾駆するスタイルの美しさカッコよさ。

 第4番 イエスの神殿への拝謁(シャコンヌ) (リナ・トゥール・ボネによるライブ映像 このCDの音源ではありません)
 (終盤の昂ぶりが熱い!)

敬虔な祈りの楽章でも、内へ内へと没入してゆくようで、同時にしっかりとした「外面性」を秘めており、聴いて楽しい面白い。
音への感性がヴィヴィッドで生命力にあふれています。

 第13番 精霊降臨 より第1楽章
 

最後の「パッサカリア」
繊細でほの暗く甘い抒情をたたえ、明滅する感情の移ろいを鮮やかに映し出しながら全曲を締めくくります。

 第16番 守護天使 パッサカリア
 

素晴らしいロザリオのソナタでした。

最近聞いた同曲のCDでは、グナール・レツボールの新録音(2019)が印象に残っています。
表現意欲の大洪水というか、あんた黒魔術師かよと言いたくなるほどおどろおどろしい演奏で、これはこれで大変面白かったです。

あるいはレイチェル・ポッジャー(2015)。
折り目正しく正確無比、あなたは尼僧院長ですかと言いたくなるほど清潔、あえて情緒的な語り口を排したクールで客観的な演奏。

ちょっと古いですがアンドルー・マンゼ(2003)は、リチャード・エガー(オルガンまたはチェンバロ)との二人のみで演奏。
そんなに人件費ないんですかと突っ込みたくなりますが、唯一の二重奏による全曲録音として大変貴重で興味深い。

ひるがえってリナ・トゥール・ボネ「天衣無縫」
いわば「野生のロザリオのソナタ」、活き活きとした歌いまわしとふくよかな色香で心を満たしてくれます。

リナ・トゥール・ボネは2018年に来日、「ロザリオのソナタ」全曲演奏を行いました。
そういえば私、NHK-BSで放映されたものを録画しておりますが、とっても素晴らしかったです。

 リナ・トゥール・ボネ 日本ツアー 2018
 

(2023.02.04.)


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